TOP
>
環境性能お役立ちコラム
>
2023
11
1

増改築における省エネ適判を解説!既存建築物の省エネ基準を

増改築における省エネ適判を解説!既存建築物の省エネ基準を解説

昨今は環境にやさしい建築物を建てることが求められており、省エネ適合性判定(以下、省エネ適判)が義務付けられる建物もあります。そんな中意外と知られていないのが、増改築の省エネ基準についてです。2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、既存建築物に対しても省エネ基準が適用されます。しかし、増改築の場合は面積や時期によって対象が異なり、新築と比べてその基準は複雑です。この記事では、増改築における省エネ適判について、基準や判断フローを詳しく解説します。

省エネ適判とは

省エネ適判は、建築物が省エネ基準を満たしているかを評価する制度で、所管行政庁や専門機関が判定します。対象となる建築物は面積や用途により異なり、増築や改築も規制の範囲内です。特定の条件を満たす場合、届出が必須です。

世界的には、パリ協定を受けて省エネの必要性が高まっています。その目標として、温室効果ガスの2013年度比での26%削減、民生部門でのエネルギー消費の40%削減が掲げられています。この背景から、日本でも2015年に建築物省エネ法が制定され、省エネ適判という制度が導入されました。

改正省エネ法について

2015年に制定された建築物省エネ法の、具体的な方法として導入されたのが省エネ適判です。この制度は、新築や増築において省エネ基準を遵守するかどうかを判定するもので、床面積が300m2以上の非住宅建築物に適用されています。

2021年4月以降に施行された改正省エネ法によって、この対象は拡大されます。以前は面積が300m2以上2000m2未満の中規模非住宅建築物は届出義務のみでしたが、改正後は省エネ適判が必須となっています。この改正により、より多くの建築物が省エネ適判の対象となり、環境負荷の低減が一層進むことが期待されます。特に中規模非住宅建築物において、新たな義務が生じたことで、省エネ基準の遵守がより厳格になりました。

特定建築行為とは

省エネ適判は特定建築行為を行う建築物に対して必要になります。特定建築行為は、主に非住宅部分の床面積が300㎡以上の建築物(特定建築物)の新築・増築・改築を指します。具体的には、特定建築物の新築、その増改築(非住宅部分が300㎡以上)および、増築後に特定建築物となる増築(非住宅部分が300㎡以上)が該当します。

特定増改築とは

特定増改築行為は、特定建築行為の一部を緩和した措置です。具体的には、2017年4月1日時点で存在する建築物の増改築が対象で、その床面積が増改築後の特定建築物全体の1/2以下であれば、適合義務は不要で、届出のみが求められます。この緩和措置が使える条件として、基準日より前からある建築物で、過去の増築や部分撤去が問題にならない場合です。

省エネ適判の対象となる増改築

省エネ適判の対象となる増改築工事は以下の3パターンです。増改築は新築と比べて基準が複雑なので注意しましょう。

省エネ適判の対象となる増改築:パターン①

  1. 既存建築物の非住宅の床面積が300㎡以上
  2. 非住宅部分の増改築の規模が300㎡以上
  3. 増改築を行う建築物が平成29年4月1日時点で存在しない

省エネ適判の対象となる増改築:パターン②

  1. 既存建築物の非住宅の床面積が300㎡未満
  2. 非住宅部分の増築が300㎡以上、かつ増築後の非住宅部分の面積が300㎡以上
  3. 増改築を行う建築物が平成29年4月1日時点で存在しない

省エネ適判の対象となる増改築:パターン③

  1. 既存建築物の非住宅の床面積が300㎡以上
  2. 非住宅部分の増改築の規模が300㎡以上
  3. 増改築を行う建築物が平成29年4月1日時点で存在するが、「非住宅部分の増築の床面積」の「増改築後の非住宅部分の床面積」に対する割合が1/2を超える

(参考:国土交通省 建築物省エネ法の概要より)

省エネ適判の判断フロー

増改築時の省エネ適判の判断でチェックするのは以下の3項目です。

  • 既存建築物における非住宅部分の床面積
  • 非住宅部分の増改築の床面積
  • 既存建築物が建った時期

既存建築物における非住宅部分の床面積

既存建築物の非住宅部分の床面積をチェックしましょう。非住宅部分が300㎡未満の場合はパターン②しか該当しないため、省エネ適判の必要性はかなり小さくなります。

非住宅部分の増改築の床面積

増改築を施す非住宅部分の面積を確認しましょう。いずれの場合においても、非住宅部分の増改築の規模が300㎡未満の場合は、省エネ適判は不要です。

既存建築物が建った時期

増改築を行う既存建築物が建った時期は判断に大きく関係します。平成29年4月1日にすでに存在している建築物は省エネ適判の対象となる可能性が低くなります。

建築物省エネ法に係る規制措置

建築物省エネ法に係る規制措置には、省エネ適判を含め以下の3つがあります。

  • 適合性判定(省エネ適判)
  • 届出
  • 建築士から建築主へ評価・説明

適合性判定(省エネ適判)

まずは前述の通り、適合性判定があります。特定建築行為を行う場合は、その建築物は省エネ基準に適合しなければならず、省エネ適判を実施したうえで計画を進める必要があります。省エネ適判を行わなければ建築確認申請や完了検査にパスせず、工事着工や建築物の使用ができません。

届出

床面積300㎡以上の新築、増築、改築をする場合は、所管行政庁に届出を行う必要があります。届出は工事着手の21日前までに行い、適合しない計画には指示・命令が出る可能性があります。指示に従わない場合は、罰金の対象となることもあるため注意が必要です。

建築士から建築主へ評価・説明

床面積が10㎡以上300㎡未満の建築物を建てる場合、建築士による省エネ基準への適合性評価とその説明が必要です。ただし、建築主がこれを不要とする場合は該当しません。省エネ適判に該当しない建築物でも、建築士には説明する義務があり、建築主はそれを聞く権利があると覚えておきましょう。

省エネ適判を増改築で行う際の注意点

増改築において省エネ適判を行う際の注意点は以下の二点です。

  • サッシの断熱性能に注意
  • エネルギー効率が悪い古い設備

サッシの断熱性能に注意

増改築工事で省エネ適判を行う場合はサッシの断熱性能に注意が必要です。なぜなら、サッシは壁や天井などの外皮と比べても熱の損失が大きく、省エネ基準適合に大きく影響するからです。木製サッシやアルミサッシ、また、単板ガラスを使用したサッシは熱損失が大きく、省エネ効果を大きく下げます。すでに設置されたサッシの性能も評価し、必要なら交換や改修も視野に入れるべきでしょう。専門家の意見も参考にし、計画段階からしっかりと断熱性能を考慮することで、より確実に省エネ適判を得られます。

エネルギー効率が悪い古い設備

増改築を進める際の省エネ適判において、古い設備のエネルギー効率は重要なポイントです。既存の建築物には、旧い型式のエネルギー効率が低い設備が多く存在するからです。具体的には、古い型のエアコンや照明、暖房機器などは、新しいものに比べて効率が劣る商品がほとんどです。また、長年使用することで効率が落ちている設備も多々存在します。したがって、増改築計画においては、既存設備のエネルギー効率を評価し、必要であれば最新の高効率な設備に交換する必要があります。

省エネ適判は増改築も必要!既存住宅の省エネ基準を解説【まとめ】

省エネ適判は元々なかった制度なので、面倒に感じる方もいるでしょう。しかし、環境問題を考えると、新築はもちろん、増改築での取り組みも欠かせません。健康や光熱費を考えてもメリットがあるため、ヒートショックや光熱費高騰の対策にもなります。増改築の場合も省エネ基準を高く保ち、温かい住宅で快適に過ごしましょう。

新着コラム

おすすめ会社を一発選定!30秒アンケートはこちらをClick!