近年、環境への配慮が急速に高まる中で、不動産業界もその影響を受けています。そんな時に注目されているのが「CASBEE不動産」という評価制度です。この制度は、建築物の環境性能を客観的に評価するための仕組みであり、不動産取引やブランディングに生かす手段として開発されました。
信頼性の高い評価を受けた物件は、その価値が高まり、環境に優れた物件は社会的な評価も受けやすくなります。この記事では、CASBEE不動産の詳しい内容のほか、メリット・デメリットなどを解説します。
CASBEE不動産は、建物の環境性能を評価するCASBEEの一部です。このツールは、不動産評価に特化しており、不動産開発や取引に関わる人々が活用できるように設計されています。2012年に開発されて以来年々注目を集めており、既存建物の運用中でも利用できるのが特徴です。
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能を総合的に評価するためのシステムです。2001年に国土交通省住宅局の支援で開発が始まり、省エネルギー、環境負荷、室内の快適性、景観など、多角的な要素を考慮に入れます。
また、CASBEEにはCASBEE不動産以外にも複数の評価ツールが存在します。
これらは総称して「CASBEEファミリー」とも呼ばれます。CASBEEはその多様性から建築の環境配慮に大きく貢献しています。
環境性能効率(BEE)は、建築物の環境品質(Q)と環境負荷(L)を用いて算出される指標です。これらの関係性は次の式で表すことができます。
・環境性能効率(BEE)=環境品質(Q)/環境負荷(L)
BEE値が高いほど、環境に優れた建築物と評価されます。また、BEE値は五段階のランク(CランクからSランク)で示され、グラフ上での傾きとしても表示可能です。これにより、評価結果を簡潔に理解・比較できます。このように、CASBEEとBEEは建築物の環境性能を明確かつ簡潔に評価・表示するツールとなっています。
CASBEE不動産の評価内容について、以下三点を解説します。
CASBEE不動産の評価対象は、竣工後1年以上運用実績がある建築物です。用途は事務所、店舗、集合住宅、物流施設に限定されます。建物規模は問題ではありませんが、一定割合以上の床面積がこれらの用途で構成されている必要があります。
評価結果は4つに分類されます。以下はCASBEE不動産の総合評価のランクです。
CASBEE不動産は、建物の環境性能を評価し、それを不動産市場で活用する目的で開発されました。評価項目は必須項目と加点項目の2種類からなり、世界共通の指標やBREEAM、LEEDなどの環境性能評価を参考に設定されています。
・エネルギー/温暖化ガス
・水
・資源利用/安全
・生物多様性/敷地
・屋内環境
エネルギー/温暖化ガス(加点35点)
・水(加点10点)
・資源利用/安全(加点20点)
・生物多様性/敷地(加点20点)
・屋内環境(加点15点)
必須項目をすべて満たし、加点項目で一定の点数を得ると認証されます。加点項目は21項目あり、100点満点で評価されます。CASBEE不動産は、不動産マーケットでの普及とブランディングを目的としており、そのためにはシンプルで比較可能、互換性のある評価が求められています。
CASBEE不動産の評価を受ける最大のメリットは、不動産の価値が上がることです。この価値向上には主に2つの要因が寄与しています。
これらの要素が、物件やそのオーナーに対して良好な印象を与え、結果として不動産の価値を高めます。利用者や環境に優しい不動産をつくることで、その価値が向上するのがCASBEE不動産です。
CASBEE不動産の最大のデメリットは費用負担です。評価を高めるためにかかる建築コストと、評価を受けるための専門の評価機関に依頼する費用がかかります。さらに、時間的制約や管理負担もデメリットとして考慮すべきです。詳細なデータ収集と分析には時間がかかる上、評価を維持・向上させるためには継続的な環境マネジメントが必要となります。このような要素が運用・管理の手間となる可能性があります。CASBEE不動産はメリットが大きい分、利用には負担がともなうことも知っておきましょう。
CASBEE不動産は環境性能を高めることで不動産の価値を向上させる新しい評価制度です。評価が高い建築物は信頼性と環境貢献が高まりますが、費用と管理負担も考慮する必要があります。それでも、この評価制度は持続可能な社会に向けた重要なステップであり、ビルオーナー、テナント、投資家にとって有益です。この制度が広まれば、建築物の持続可能性が高まり、より良い未来へとつながるでしょう。