CASBEEは、建築物の環境性能を評価するためのシステムです。建築物の持続可能性を測定し、向上させるために日本で広く利用されています。このCASBEEの評価は、新築と既存建築で異なり、それぞれの建築物に適した評価基準が適用されます。この記事ではCASBEEの評価項目の違いに焦点を当て、新築と既存建築の評価プロセスについて詳しく解説します。持続可能な建築に興味がある方はぜひ参考にしてください。
CASBEE(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)は、建築物の環境性能を評価するための日本発の制度です。設計段階から運用・維持、さらには解体・リサイクルに至るまで、建築物のライフサイクル全体を総合的に評価できます。
CASBEEの評価は、エネルギー効率、水利用、資源循環、居住者の健康といった多角的な側面を対象とします。環境に配慮した設計や運用を行うことで、物件の社会的な評価はもちろん、運用コストの削減や資産価値の向上が期待されます。
CASBEEには様々な種類の評価ジャンルがありますが、それぞれ4〜5段階の評価ランクが存在します。これらのランクは、建築物が持つ環境負荷と環境品質に関するパフォーマンスを総合的に判断して付けられます。
ランクはS、A、B(ジャンルによっては B+、 B -)、Cがあります。Sはランクが最も高く、持続可能性に優れた建築物を示します。一方、Cランクは改善の余地が大いにある状態を指すランクです。
これらの評価は、物件の購入、賃貸、売却、改修等の際に重要な判断基準となることが多く、評価結果はテナントや投資家にとっても有用な情報となります。高いランクを持つ建築物は、その社会的な評価や資産価値が高くなる傾向にあります。
CASBEEの評価は、新築建築物と既存不動産において異なるアプローチが取られます。CASBEEには複数の種類が存在し、その選択は建築物のタイプに依存します。具体的には、新築建築物の評価には「CASBEE建築(新築)」、既存不動産の評価には「CASBEE不動産」が用いられます。
CASBEE建築(新築)は、建築物の設計段階で環境性能を評価し、これによりテナントや将来の建物の売買取引において、建築物の魅力を高められます。
対照的に、CASBEE不動産は、既存不動産の市場価値向上を図るためのブランディングツールとして開発されました。市場での競争力を効果的に高めるため、既存の不動産に新たな付加価値を与えられます。
新築の建物はCASBEE「建築」で評価されます。この場合の評価項目は、環境品質と環境負荷に分かれ、それぞれ以下のような分類があります。
これらの評価項目から算出された「BEE値」「建築物の環境スコア」によって、5段階で評価されます。
各評価項目について詳しく解説します。
前述の各評価項目について詳しく解説します。
室内環境の評価は、音環境、温熱環境、光・視環境、空気質環境の4つのカテゴリーに分けられます。
サービス性質の評価には、機能性、耐用性・信頼性、対応性・更新性の3つのカテゴリーがあります。
敷地内の室外環境は、生物環境の保全と創出、まちなみ・景観への配慮、地域性・アメニティへの配慮の3つに分類されます。
エネルギーの評価は、建物外皮の熱負荷抑制、自然エネルギーの利用、設備システムの高効率化、効率的運用の4要素を評価します。
資源・マテリアルの評価は、水資源保護、非再生性資源の使用量削減、汚染物質含有材料の使用回避の3要素に焦点を当てます。
敷地外環境の評価は、地球温暖化への配慮、地球環境への配慮、周辺環境への配慮の3要素を対象とします。
既存建物の場合はCASBEE「不動産」で評価を受けられます。CASBEE「不動産」の評価項目は5つです。
これらには必須項目と加点項目があり、合計点数が評価の基準になります。
評価ランクは4段階で評価されます。各ランクと評価点数は次の通りです。
CAS BEE不動産の各評価項目の詳細は以下の通りです。
エネルギーと温暖化ガスに関する評価は、特に緊急性を帯びたテーマです。その核心をなすのは以下の4つの必須項目です。
さらに、評価を高めるための加点項目もあり、その合計加点は35点です。具体的に評価されるのは以下の項目です。
これらを総合して、より環境に配慮した建築物の設計と運用が求められています。
水に関する評価は、持続可能な資源利用を促進するために特に重要です。核心となる必須項目は2つあります。
さらに、加点項目があり、その最高得点は10点です。評価のポイントは水使用量の計算値と実績値です。これらを総合して、水資源の効率的な使用が評価され、より環境に配慮した建築物の設計と運用が求められています。
資源利用と安全性の評価は、建築物の長期的な耐久性と人々の安全に直結しています。このテーマでの必須項目は以下の3点です。
加えて、最高20点の加点項目もあります。評価される要素は次の通りです。
これらの項目を総合的に考慮することで、より安全で持続可能な建築物の設計と運用が求められています。
生物多様性と敷地に関する評価には、環境への配慮が求められます。必須項目は以下の3つです。
加点項目も存在し、その合計加点は20点です。評価される要素は以下の通りです。
これらの項目を総合的に考慮することで、より生態系への負荷を軽減し、生物多様性を促進する建築物の設計と運用が重要視されます。
屋内環境についての評価は、健康と快適性に直結する要素です。必須項目は次の2点です。
加点項目もあり、その合計は15点です。具体的な加点項目は以下です。
これらの項目を総合して考慮することで、居住者の健康と生活の質を高める建築物の設計と運用が期待されます。
CASBEEを使用することで、建築物の環境性能が詳細に評価され、その強みや改善点が明確になります。これにより、設計から運用、改修に至るまでのフェーズで、より環境に優しい選択が可能になります。
特に効果が期待できるメリットは、コスト削減、環境配慮、社会的な信頼性の向上の三点です。
CASBEEを用いることで、エネルギー効率や水使用効率が明確になります。これによって、初期の設計段階で省エネに効果的なシステムや素材の選定が可能となり、長期的な運用コストが削減されます。このようなコストの削減は、物件オーナーにとってもテナントにとっても明確なメリットとなります。
CASBEEの評価に基づき、CO2排出量を削減したり、消費エネルギーを抑制したりできます。CO2排出の3分の1は建築が関連すると言われており、環境に配慮した建築の重要性は年々高まっています。反対に、環境への配慮を欠いた企業や物件はブランド価値が低下する恐れもあるため、イメージ向上のためにも欠かせない要素となっています。
環境性能が高い建築物は、テナントや顧客、さらには投資家からも高く評価されます。CASBEEの評価が高いと、それが外部に広く知られることで、企業や物件の社会的信頼性が向上します。信頼性の高い物件は、賃料や販売価格が高く設定できる場合もあり、これが結果として物件価値の向上につながります。
CASBEEは環境だけでなく、オーナーやエンドユーザーにも優しい建築を推奨する制度です。この制度を活用すれば、ランニングコストやCO2排出量をおさえた優れた建築を増やせます。持続可能な社会をつくっていくために、CASBEEの評価項目を正しく理解しましょう。