TOP
>
省エネ計算お役立ちコラム
>
2023
8
9

省エネ計算の計算式「モデル建物法」~その性質と標準計算法

建物のエネルギー性能を計算するためにある「省エネ計算」について

省エネ計算とは、「その建物が、どれほどの省エネルギー性能を持っているか」を測るための計算のことをいいます。
地球環境の保全を目的として作られた概念であり、建築確認手続きのなかで、この省エネ計算が行われることになります。

さて、この省エネ計算を用いた「省エネ基準」ですが、この概念自体は1980年にはすでに「省エネルギー基準」として誕生していました。
その後、幾度かの改訂・改正を経て、2021年には「建築士(設計者)から、その建物の建築主への説明を義務化する」と定められました。
なお、非住宅でかつ規模が300㎡を超える建物に関しては、省エネ基準に「適合」していなければならないとされていましたし、一般住宅でも規模が300㎡を超える建物に関しては「届け出」の義務がありました。

このようにして運用されてきた省エネ基準適合ですが。2025年にまた大きな改定がなされます。
今までは「適合しなければならない」と義務付けられていたのは300㎡を超える非住宅系の建物だけでしたが、今後は住宅にも適合義務が課せられるようになります。
また、今までは「説明義務」にとどまっていた小規模の建物も、非住宅・住宅問わず、適合義務が課せられるようになったのです。

つまり、2025年をもって、「非住宅・住宅、広さに関わらず、あらゆる建物がすべて、省エネ基準に適合しなければならない」とされたわけです。
このため、省エネ計算への理解の重要度は、今後さらに上がっていくと考えられます。

省エネ計算でチェックされる2つの要素

ここからは、省エネ計算でチェェックされる要素について解説していきます。

省エネ計算でチェックされる要素は、

  • 一次エネルギー消費量
  • 外皮性能

の2つです。
それぞれ見ていきましょう。

・一次エネルギー消費量

「一次エネルギー消費性能」とは、「その建物が、どれだけのエネルギーを消費するか」を求めた数字です。

この「建物が消費するエネルギー」のなかには、

  • 空調を利用するときに使われるエネルギー
  • 換気のためのエネルギー
  • 給湯のためのエネルギー
  • 照明を使うためのエネルギー

がまれています。また、家電製品の使用エネルギーもここに含まれています。一般の住宅ではほとんど利用されることはありませんが、エスカレーターやエレベーターなどがある場合は、その使用に際して発生するエネルギーもここに加算されます。
これらを数字を合計したものを、「一次エネルギー消費量」といいます。

当然、この「一次エネルギー消費量」が小さければ小さいほど、その建物は省エネの建物であるといえます。

・外皮性能

「外皮性能」とは、その建物の外皮(外壁)の断熱性能のことを指します。

外気温が同じ温度であっても、外皮の性能によって室温は異なります。そして室温が異なれば、そこで消費されるエネルギーの量も変わってきます。たとえば非常に断熱性の高い建物の場合、外気温が35度を超えていても、家の中は比較的涼しいということがよくあります。しかし断熱性の低い建物の場合は設定温度を低くしたエアコンを起動させないと、耐えることができないでしょう。

詳しい計算式については割愛しますが、この「外皮性能」の計算は、非住宅がそれとも住宅かで異なります。たとえば非住宅系の場合は、室外の温度の影響を受けやすい場所の広さを考慮して計算されますが、住宅の場合は冷房を使う季節の日射取得量の平均値を計算に入れます。

エネ計算の計算方法~モデル建物法と標準入力法

ここまで省エネ計算についての概略とそのチェック要素について解説してきましたが、ここからは省エネ計算の計算方法について解説していきます。

省エネ計算の計算方法として、主に

  • モデル建物法
  • 標準入力法

の2つが挙げられます。

・モデル建物法

モデル建物法とは、文字通り、「モデル」を利用して算出していく方法をいいます。過去の実績から国がまとめた建物別のデータをモデルとして活用して、建物の機器の情報を入力していくことで数値を出す方法を指します。
簡易方式の計算式であるため、下記で紹介する「標準入力法」よりも手間がかからず、かつ費用も抑えられるのが魅力です。

・標準入力法

標準入力法とは、対象となる建物のすべての部屋の機器情報や面積、また外皮性能などを細かく入力して計算していく方法をいいます。
モデルを使って数値を求めるモデル建物法とは異なり、一つひとつの部屋単位で入力を行うため、手間と時間と費用がかかります。ただしその分、モデル建物法に比べて正確な数値が出ます。


なお、省エネ計算においては一般的には上記の2つのいずれかを使うことになります。
ただ、2023年7月現在は、モデル建物法をより簡略化した小規模版モデル建物法を使うことができます。もっともこれは「300㎡未満の非住宅建物に限り使用可能」とされているため、その適用範囲は極めて限定的です。

モデル建物法か、それとも標準入力法か?

省エネ計算の計算方法は、主に「モデル建物法」と「標準入力法」があるとしました。
それでは、実際の計算においてはどちらを使えばよいのでしょうか。

現在は、省エネ計算を必要とする建物のうちの9割以上が、モデル建物法によって計算されています。そのため、基本的にはモデル建物法を使うかたちで問題ありません。すでに述べた通り、モデル建物法の方が時間も費用も手間もかからない計算方法だからです。

しかしBELS(建築物エネルギー性能表示制度)の最高評価を目指すなら、標準入力法を選んだ方がよいでしょう。ちなみにBELSで高評価を得ると、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。太陽光発電などで生み出すエネルギーが、その家で使われるエネルギーを上回る家のこと)の取得が可能となります。
「ZEH」の表記は、その建物のユーザーを探すときに非常に有効な売り文句となります。また、このような表記ができる物件は、「物件価値が高いうえに、自然に配慮している企業が打ち出している物件である」と判断されます。このため、物件の価値・評価だけではなく、企業全体のイメージアップにもつながります。

モデル建物法と標準入力法の間に、「優劣」はありません。自社の建物の性質や売り出し方を考えて、どちらを選ぶかを決定するとよいでしょう。

省エネ計算は業者にお願いするのが確実

「省エネルギー基準」の考え方は、今から40年以上も前に誕生したものです。しかし幾度かの改正を経つつ、現在ではより重要度の高いものだと認識されています。2025年にはすべての建物で省エネルギー基準への適合が義務化されますから、新築の建物を取り扱う会社はこれに無関心ではいられません。

しかし省エネ計算は、かなり煩雑で、専門的で、そして難解なものです。また、時間もかかります。そのため、自社独力で完結させようとするのではなく、専門の業者にお願いした方が効率的です。
現在は、省エネ計算をサポートする業者を比較して選べるようになっているサイトもありますから、これを利用して、依頼する業者を決定すると手間がかかりません。▶https://www.shoenekeisan-kankyoninsho.com/

まず読みたい人気コラム

新着コラム

○○とは?基礎知識まとめ
おすすめ会社を一発選定!1分アンケートはこちらをClick!