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2024
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非住宅の省エネ計算を解説。計算方法と省エネ基準を徹底解説

非住宅の省エネ計算とは?計算方法と省エネ基準を徹底解説

建築分野で環境への影響を軽減するには、商業施設やオフィスビルなどの非住宅建築物における省エネルギー対策が欠かせません。非住宅は住宅と比較して規模が大きく、エネルギー消費量も多いため、省エネ対策による影響は大きいと言えます。この記事では、非住宅建築物に特化して、省エネルギー対策の計算方法や基準について詳しく説明します。

非住宅も省エネ計算が必要

 

省エネ計算の重要性が叫ばれていますが、住宅のみならず、非住宅も同様です。現在、300㎡以上の床面積を持つ建築物に対しては、建築物のエネルギー消費性能の向上を目指す「建築物省エネ法」に基づく省エネ基準適合義務があります。この法律の目的は、省エネ性能の確保、環境負荷の低減の二点で、省エネ基準に適合した設計が必須です。近年、地球温暖化対策として、国内外でカーボンニュートラルへの取り組みが加速している中、非住宅建築物の省エネ計算はますます重要性を増しています。

建築物省エネ法について

建築物省エネ法は、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るための日本の法律です。この法律は、新築や大幅な改修を行う特定建築物が一定の省エネ性能基準に適合することを義務付けています。

この法律は、環境負荷の低減とエネルギー資源の有効活用を目的とし、長期的には脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。これには適合性の判定や届出義務、建築物のエネルギー消費性能を向上させるための誘導措置などが含まれており、建築主や設計者に対して省エネ性能の確保を促しています。

カーボンニュートラルに向けた2030年目標

省エネが重要視されている背景として、カーボンニュートラルに向けた目標があります。カーボンニュートラルとは、世界的な気候変動への取り組みの一環として、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの正味排出量ゼロを目指した世界各国の取り組みです。これはパリ協定の長期目標に沿っており、化石燃料への依存度低減、再生可能エネルギーの普及促進、省エネルギー技術の進展、持続可能な交通や農業などあらゆる分野にわたる構造的変化を伴います。

2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、2030年までに達成しなければいけない目標があります。日本政府は2030年までに、2013年度比の温室効果ガスを46%削減としています。この目標を達成するためには、エネルギー消費の大きい非住宅ビルや施設の省エネ性能が非常に重要です。2030年までの達成を目標にしたこれらの取り組みは、産業界、技術イノベーション、そして地域や個人レベルでの取り組みが一体となった全体的な対策が必要とされています。

非住宅の省エネ計算は3種類

 

非住宅の省エネ計算は、次の通り3種類の方法があります。

  • 標準入力法
  • モデル建物法
  • 小規模モデル建物法

それぞれの異なる特徴を解説します。

標準入力法

標準入力法は、非住宅建築物の省エネ計算において、最も詳細な情報を用いた精緻な評価を行う方法です。この手法では、建築物内の各部屋に対して、床面積、使用する設備の種類や性能、外皮性能など具体的なデータを入力し計算します。その結果として、一次エネルギー消費量基準(BEI)を満たしているかどうかを判定します。

標準入力法の特徴は、建物の具体的な使用条件や設備の選択に基づく、よりリアルなエネルギー消費量の推計ができる点です。省エネ性能を最大限に引き出したい、あるいは特定の省エネ基準や認証を目指す建築プロジェクトに適しています。ただし、その分、計算には時間とコストがかかり、詳細なデータの収集が必要となるため、計画の初期段階での適用を考慮する必要があります。

モデル建物法

モデル建物法は、非住宅建築物の省エネ計算を行う際の簡易的な方法です。この手法では、建物用途ごとに国が定めた標準的なモデル建築物を想定し、その性能値を基に計算を行います。計算の簡素化と省エネ基準への適合判定を迅速に行うことを目的としています。

モデル建物法を用いることで、設計者や建築主は、建築物の一次エネルギー消費量を効率的に推定し、省エネ性能の基準に適合しているかを容易に確認できます。この計算法は、特に時間やコストを抑えつつ、建築物省エネ法に基づく省エネ基準への適合を確認したい場合に適しています。ただし、モデル建物法による評価は標準入力法に比べてやや安全側(不利側)に評価される傾向があるため、より厳しい省エネ基準や認証を目指す場合には標準入力法の利用が推奨されます。

小規模モデル建物法

小規模モデル建物法は、床面積300㎡未満の非住宅建築物に適用される省エネ計算の簡易版です。この方法は、モデル建物法を基にしつつ、計算に必要な入力事項を大幅に減少させたことが特徴です。主に一般的な小規模建築物で想定される機器や設備を中心に省エネ性能を評価します。

小規模モデル建物法の最大の利点は、計算の手軽さと迅速さです。特に省エネ計算への適合義務がない小規模建築物でも、簡単に省エネ性能の概算が行えます。ただし、この計算法で得られる結果は、省エネ適合性判定やBELS(建築物エネルギー性能表示制度)の申請には使用できません。それでも、設計初期段階での省エネ性能の確認や、将来的に省エネ計算への適合が義務化された際の準備、また業者の説明義務を果たすための有効なツールとして活用されています。

省エネ計算の考え方

 

省エネ計算は、建築物のエネルギー消費を評価し、省エネルギー性能の向上を目指すための重要なプロセスです。省エネ計算には2つの考え方があります。

  • 一次エネルギー消費量基準について
  • 外皮基準について

これらの基準は、建築物の省エネ性能を総合的に把握するために用いられますが、その内容と目的には大きな違いがあります。

一次エネルギー消費量基準について

一次エネルギー消費量基準は、建築物のエネルギー効率を評価するために設定された指標です。この基準は、建築物における照明、空調、給湯などの設備機器で消費するエネルギー消費量から算定されます。

一次エネルギー消費量基準の目的は、エネルギーの使用を効率化し、CO2排出量の削減を促進することです。建築物が環境に及ぼす負荷を軽減するためには、設計段階からエネルギー効率の高い設計を行うことが求められます。この基準を満たすことは、環境への配慮だけでなく、エネルギーコストの削減にもつながります。

外皮基準について

外皮基準は、建築物の外壁、窓、屋根などの外皮部分の断熱性能と日射熱取得性能を評価するための基準です。この基準によって、建築物の外皮が持つ熱の流出入を抑制し、エネルギー効率の高い建築環境を実現します。高い断熱性能により、冷暖房に必要なエネルギー消費を削減でき、運用コストの削減にもつながります。外皮基準を適切に満たした建築物は、快適な居住環境の提供と同時に、環境負荷の低減を実現することが可能です。

非住宅の省エネ計算とは?計算方法と省エネ基準を徹底解説【まとめ】

 

非住宅建築物の省エネ計算の重要性とその具体的な方法について解説しました。全産業のエネルギー消費のうち、約3割が建築分野によるものと言われています。そのため、建築分野の省エネ化は無視できない課題で、消費エネルギーが大きい非住宅は特に重要性が叫ばれています。非住宅建築物における省エネ計算と基準の適用は、持続可能な未来を築くための重要なステップであると言えるでしょう。

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