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2023
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改正建築物省エネ法とは?省エネ性能表示制度の詳細を解説

改正建築物省エネ法とは?省エネ性能表示制度の詳細を解説

地球温暖化への対策強化のため、日本政府は建築物のエネルギー効率を高める「改正建築物省エネ法」を施行しました。この法律は、新築及び既存の建築物に対する省エネ基準の強化を目指し、より持続可能な建築環境の実現に貢献します。本記事では、改正法の重要なポイント、具体的な施策、そして省エネ性能表示制度の詳細について、わかりやすく解説していきます。

改正建築物省エネ法

改正建築物省エネ法は、日本の建築物のエネルギー効率を向上させることを目的としています。この法律では、新築建築物だけでなく、大規模改修を行う非住宅建築物にも厳しい省エネ基準の適用がされています。特に、大規模な非住宅建築物では、省エネ基準の遵守が強化され、より高いエネルギー効率が求められるようになります。さらに、建築物の省エネ性能を明示するための表示制度が導入され、消費者や利用者に対して建築物のエネルギー効率情報が提供されます。これらの措置で、建築分野におけるエネルギー消費の削減と、より持続可能な建築環境の実現を目指しています。

政府が決めた省エネ目標

日本政府が設定した省エネ目標は、国のエネルギー政策や気候変動対策の一環として重要な位置を占めています。これらの目標は、以下のような具体的な内容を含んでいます。

  • 2050年のカーボンニュートラル:日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。これは、国内での炭素排出量と吸収量のバランスを保つ状態を目指すという意味です。建築物の省エネ化は、この目標達成に向けた重要なステップとされています。
  • 2030年度の温室効果ガス排出量削減:政府は2030年度までに2013年度比で46%の温室効果ガス排出量を削減するという具体的な目標を設定しています。建築分野では、エネルギー消費の削減がこの目標達成に大きく寄与することが期待されています。
  • 省エネ基準の強化:建築物に関しては、より厳しい省エネ基準が設定されています。これにより、新築や既存建築物のエネルギー効率を改善し、エネルギー消費の削減とCO2排出量の低減を図ることが狙いです。
  • エネルギー基本計画の実施:日本のエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの利用拡大、原子力発電の有効利用、化石燃料の高効率利用など、エネルギー効率向上に向けた多角的な施策が打ち出されています。

これらの目標は、地球温暖化対策や持続可能な社会の構築に向けた日本の取り組みの一環として設定されています。建築物の省エネ化はこれらの広範な目標の達成に向けた重要な要素です。

改正建築物省エネ法の具体的な施策

改正建築物省エネ法では、建築物のエネルギー効率を向上させるための具体的な施策が採用されています。

  • 大規模な非住宅建築物の省エネ基準引き上げ 令和6年4月(予定)
  • 全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務付け 令和7年4月(予定)
  • 4号特例の変更 令和7年4月(予定)

これらの施策は、環境に配慮した持続可能な建築環境の実現を目指しています。

大規模な非住宅建築物の省エネ基準引き上げ 令和6年4月(予定)

令和6年4月に大規模な非住宅建築物の省エネ基準の引き上げが予定されています。この施策では、オフィスビル、商業施設、工場などの大規模な非住宅建築物に対して、より厳しい省エネ基準が適用されます。具体的には、建築物の外皮(壁、窓、屋根など)の断熱性能の向上、エネルギー効率の高い設備の使用、照明や空調システムの省エネ化などが求められます。これにより、建築物全体のエネルギー消費量を大幅に削減し、CO2排出量の低減を図ることが目的です。

また、この基準の引き上げは、エネルギー消費が特に大きいとされる大規模な非住宅建築物に焦点を当てており、日本全体のエネルギー効率を向上させる上で重要な役割を果たします。この施策は、国内のエネルギー政策と気候変動対策における重要な一環として位置づけられています。

全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務付け 令和7年4月(予定)

令和7年4月に予定されている、全ての新築住宅および非住宅に対する省エネ基準適合の義務付けは、日本の建築物におけるエネルギー効率を向上させる重要な取り組みです。この施策により、新築されるすべての建築物が、強化された省エネ基準に適合することが必須となります。新築の住宅やオフィスビル、商業施設、教育機関などが、高い断熱性能、エネルギー効率の高い照明と暖房・冷房システム、再生可能エネルギーの利用などの厳格な省エネ基準を満たす必要があるため、建築物の設計段階からエネルギー効率を考慮したアプローチができます。これにより、エネルギー消費の削減、温室効果ガス排出量の低減、そして国のカーボンニュートラル目標への貢献が期待できます。

4号特例の変更 令和7年4月(予定)

令和7年4月に予定されている4号特例の変更は、改正建築物省エネ法の一環として導入される重要な更新です。4号特例は、二階建て以下の木造住宅などの特定の建築物に対して適用される省エネ基準の特例規定を指します。この変更により、これまで特例として扱われてきた建築物の範囲や基準が見直され、より厳格な省エネ基準が適用されることになります。

小規模建築物は、大規模なビルと比較すると消費するエネルギー量は多くありません。しかし、日本全体で見ると小規模建築物の数は非常に多く、その総エネルギー消費は大きな割合を占めています。4号特例が変更されれば、小規模ながらもエネルギー消費が比較的高いとされる建築物群に対する省エネ効果が期待できます。

省エネ性能表示制度について

2024年4月から、日本の住宅市場に新たな変革がもたらされます。住宅の販売や賃貸公告に「省エネ性能ラベル」の表示が義務付けられることになり、これにより消費者は一目で住宅の省エネ・断熱レベルを判断できるようになります。

この「省エネ性能ラベル」には、住宅の省エネ性能や省エネ水準の達成度が記載されます。具体的には、「エネルギー消費性能」を示す星のマークが、国が定める省エネ基準に対する達成度を表します。星の数が多いほど、省エネ性能が高いことを意味します。また、「断熱性能」の評価では、家のマークが表示されます。建築物からの熱の逃げにくさや、外からの熱の侵入しにくさを反映し、マークの数が多いほど優れた断熱性能を示します。さらに、「目安光熱費」も表示され、年間の光熱費の目安がわかります。これにより、消費者はエネルギー効率の高い住宅を容易に見分けられ、より環境に優しい住宅選びが可能となります。

この省エネ性能表示制度は、省エネ意識の向上と持続可能な住宅市場の形成に大きく貢献することが期待されています。

省エネ性能表示の対象となる建築物

この制度の対象となるのは、2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物と、その物件が同時期以降に再販売・再賃貸される場合です。この制度により、賃貸住宅を含む幅広い建築物が省エネ性能の表示を行う必要があります。

しかし、すべての建築物がこの制度の対象となるわけではありません。対象外となるのは、販売や賃貸を目的としない注文住宅や、ウィークリーマンション、民泊施設などです。これらの建築物は、主に個人的な用途や一時的な滞在を目的としているため、省エネ表示の義務からは除外されています。

省エネ性能表示制度の種類と方法

省エネ性能表示制度には、省エネ性能ラベルとエネルギー消費性能の評価書という2種類の発行物があります。これらは、建築物の省エネ性能を評価し、広く公表するために使用されます。

省エネ性能ラベルは、ポータルサイトやチラシなどの広告に使用されるラベル画像です。省エネ性能ラベルには、建築物のエネルギー消費性能が視覚的に示され、消費者が一目でその性能を理解できるように設計されています。エネルギー消費性能の評価書は、建築物の概要と省エネ性能評価を記した、保管用の証明書です。評価書には、建築物の詳細な情報とともに、その省エネ性能に関する包括的なデータが記載されています。

発行方法は評価の種類によって異なります。自己評価の場合、販売・賃貸事業者は住宅性能評価・表示協会のホームページを通じて省エネ性能ラベルを発行できます。一方、第三者評価の場合は、事業者が評価機関に申請し、評価機関から省エネ性能ラベルや評価書の交付を受けることになります。

これらの発行物は、省エネ性能の透明性を高め、消費者がより情報に基づいた意思決定を行うための重要なツールです。また、建築業界における省エネ意識の向上にも寄与すると期待されています。

省エネ性能ラベルの要素

省エネ性能ラベルには様々な種類がありますが、住宅と非住宅では要素が異なります。

住宅の場合

住宅の省エネ性能ラベルには、以下の要素が含まれます。それぞれが建築物の省エネ性能に関する重要な情報を提供します。

  • エネルギー消費性能:建築物のエネルギー効率を示し、暖房、冷房、照明などのエネルギー消費量を評価します。高い評価は省エネ性能の高さを意味します。
  • 断熱性能:建築物の断熱効果を示し、外壁、屋根、窓などの断熱性能を評価します。良い断熱性能はエネルギー消費の削減に寄与します。
  • 目安光熱費:建築物の使用にかかる推定の光熱費を示します。これにより、エネルギー効率の高い住宅の維持コストを把握できます。
  • 自己評価・第三者評価:評価が建築主や設計者による自己評価に基づくものなのか、独立した第三者機関による客観的な評価に基づくものなのかを示します。
  • 建築物名称:建築物の名称や所在地など、識別可能な情報を提供します。
  • 再エネ設備あり/なし:太陽光発電や風力発電など、建築物で利用されている再生可能エネルギー設備の有無を示します。
  • ZEH水準:ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)の基準に達しているかどうかを示します。ZEHは年間のエネルギー消費と発電量が相殺される建築物です。
  • ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH):建築物が年間のエネルギー収支でゼロ以下を達成しているかどうかを示します。
  • 評価日:省エネ性能が評価された日付を示します。

非住宅の場合

対して、非住宅建築物の省エネ性能ラベルには、以下のような要素が含まれます。これらは、建築物の省エネ性能に関する包括的な情報を提供し、エネルギー効率の高い建築物選びをサポートします。

  • エネルギー消費性能:非住宅建築物のエネルギー効率を示し、暖房、冷房、照明などのエネルギー消費量を評価します。効率が高いほど、エネルギー消費が少ないことを意味します。
  • ZEB水準:ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)の基準に達しているかどうかを示します。ZEBは年間で消費するエネルギー量と発電量が相殺される建築物です。
  • 自己評価・第三者評価:評価が建築主や設計者による自己評価に基づくものか、独立した第三者機関による客観的な評価に基づくものかを示します。
  • 建築物名称:非住宅建築物の名称や所在地など、識別可能な情報を提供します。
  • 再エネあり/なし:太陽光発電や風力発電など、建築物で利用されている再生可能エネルギー設備の有無を示します。
  • ネット・ゼロ・エネルギー(ZEB):建築物が年間のエネルギー収支でゼロ以下を達成しているかどうかを示します。
  • 評価日: 省エネ性能が評価された日付を示します。

これらの要素は、非住宅建築物におけるエネルギー効率の評価を容易にし、建築主や利用者が省エネ対策を行う際の重要な指標となります。

評価書について

評価書は、建築物のエネルギー効率と省エネ性能を詳細に記載した文書です。評価書には、自己評価と第三者評価BELSが存在します。

自己評価

省エネ性能表示制度における自己評価は、建築主や設計者が行う建築物の省エネ性能評価です。このプロセスでは、エネルギー消費性能、断熱性能、再生可能エネルギー利用などが内部分析を通じて評価されます。設計データやエネルギー効率計算、必要に応じてシミュレーションソフトウェアを利用し、省エネラベルや評価書の作成、建築設計の改善に役立てられます。しかし、主観的要素を含むため、客観性や公平性を確保するためには独立した第三者評価との併用が推奨されます。

第三者評価BELS

省エネ性能表示制度における第三者評価BELSは、その客観性と公平性によって大きな価値を持ちます。自己評価が主観に基づく可能性がある中で、BELSは独立した専門機関により行われる評価を提供し、建築物の省エネ性能に関する信頼性と透明性を高めます。この評価は、建築物のエネルギー消費量や断熱性能などを厳密に分析し、客観的なデータに基づいて行われます。これにより、消費者や利用者は信頼できる情報に基づいた意思決定が可能となり、建築主や設計者は省エネ性能の弱点を特定し改善策を講じるための具体的な指標を得ます。BELSは、省エネ性能の評価を超え、建築業界全体のエネルギー効率向上と持続可能な建築環境の実現に寄与します。

改正建築物省エネ法とは?省エネ性能表示制度の詳細を解説【まとめ】

 

改正建築物省エネ法と省エネ性能表示制度は、日本における建築物のエネルギー効率を向上させるための重要なステップです。この法律と制度は、エネルギー消費の削減、環境への配慮、持続可能な建築実践を促進し、グローバルな気候変動対策に貢献します。

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