TOP
>
省エネ計算お役立ちコラム
>
2023
8
15

CASBEEとZEBの違いと特徴

建築物の省エネルギー性能評価制度とは何か?

建築物の省エネルギー性能評価制度とは、建築物のエネルギー消費量や環境負荷を測定し、表示するための制度です。建築物の省エネルギー性能評価制度は、以下のような重要性と目的を持っています。

建築物の省エネルギー性能評価制度の重要性と目的

地球温暖化対策として、建築物のエネルギー効率の向上が求められています。
建築物は日本の最終エネルギー消費量の約40%を占めるため、省エネルギー性能の高い建築物の普及は、CO2排出量の削減に大きく貢献できます。建築物のエネルギー消費性能は、設計や施工だけでなく、運用や管理にも影響されます。そのため、建築物の省エネルギー性能を客観的に評価し、表示することで、建築主や利用者が省エネルギー性能に関する情報を正しく把握し、適切な判断や行動ができるようになります。建築物の省エネルギー性能を表示することは、建築物の市場価値や競争力を高めることにもつながります。省エネルギー性能の高い建築物は、ランニングコストや環境負荷が低く、快適性や健康性も高いというメリットがあります。これらのメリットは、建築主や利用者にとって魅力的であり、需要や満足度を高めることができます。

省エネルギー性能評価制度が解決する課題と社会的な背景

建築物の省エネルギー性能評価制度とは、建築物のエネルギー消費量や環境負荷を測定し、表示するための制度です。
省エネルギー性能評価制度は、以下のような課題と社会的な背景に対応するために重要です。地球温暖化対策として、建築物のエネルギー効率の向上が求められています。
建築物は日本の最終エネルギー消費量の約40%を占めるため、省エネルギー性能の高い建築物の普及は、CO2排出量の削減に大きく貢献できます。建築物のエネルギー消費性能は、設計や施工だけでなく、運用や管理にも影響されます。そのため、建築物の省エネルギー性能を客観的に評価し、表示することで、建築主や利用者が省エネルギー性能に関する情報を正しく把握し、適切な判断や行動ができるようになります。
建築物の省エネルギー性能を表示することは、建築物の市場価値や競争力を高めることにもつながります。省エネルギー性能の高い建築物は、ランニングコストや環境負荷が低く、快適性や健康性も高いというメリットがあります。これらのメリットは、建築主や利用者にとって魅力的であり、需要や満足度を高めることができます。

評価基準の違い

CASBEEとZEBの評価基準の比較と異なるアプローチ

CASBEEとZEBは、建築物の環境性能を評価する制度ですが、その評価基準やアプローチには大きな違いがあります。
CASBEEは、建築物の環境品質・性能(Q)と環境負荷(L)をそれぞれ評価し、その比率である環境性能効率(BEE)によって5段階でランク付けします。Qには室内環境やサービス性能、室外環境などが含まれ、Lにはエネルギー、資源、敷地外環境などが含まれます。
CASBEEは、エネルギー性能だけでなく、建築物の快適性や景観なども総合的に評価することが特徴です。また、CASBEEは、建築物の用途や目的に応じて様々な評価ツールを提供しており、新築・既存・改修・インテリア・街区・都市などのさまざまなスケールで適用できます。
ZEBは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称で、建築物で消費するエネルギーを省エネや創エネによってゼロにすることを目指した建築物です。ZEBは、一次エネルギー消費量に応じて、ZEB Ready、Nearly ZEB、ZEB、ZEB Orientedの4つの種類に分類されます。ZEBは、温室効果ガスの排出を大幅に削減することができるため、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することができます。ZEBは、エネルギー性能を主眼に置いた評価制度ですが、光熱費の削減や快適性の向上などもメリットとして挙げられます。

CASBEEとは

CASBEEとは、建築物や街区、都市などの環境性能を総合的に評価するためのツールです。以下に、CASBEEの特徴と日本国内での普及状況、評価項目とその精度、活用事例と成果について説明します。

CASBEEの特徴と日本国内での普及状況

CASBEEは、以下のような特徴を持っています。環境負荷と環境品質の両方を考慮した環境性能効率(BEE)という指標で評価することで、省エネや省資源だけでなく、快適性や景観なども含めたサステナビリティを測ることができます。
評価対象の種類や規模に応じて、様々な評価ツールが用意されており、建築物の企画段階から改修段階まで、あらゆるライフサイクルに対応できます。
評価結果はSランクからCランクまでの5段階で表示され、簡潔かつ分かりやすく建築物の環境性能を示すことができます。評価方法は公開されており、誰でも自由に利用できます。また、評価員登録制度や評価認証制度もあり、客観的な評価を受けることができます。CASBEEは、2001年に国土交通省が主導して開発されました。その後、一般社団法人日本サステナブル建築協会(JSBC)が研究開発を行い、財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が普及促進や評価員登録制度や評価認証制度の運営を行っています。現在では、国内の建設事業者や設計事務所、建物所有者、不動産投資機関などにおいて広く活用されており、一部の地方公共団体では届出制度としての活用が進んでいます。また、海外でもCASBEEに関心を持つ国や地域が増えており、国際的な普及も期待されています。

CASBEEの評価項目とその精度

CASBEEでは、以下の4つのカテゴリーに分けて評価項目を設定しています。

・環境負荷(L)建築物が地球環境や周辺環境に与える影響を測る項目です。エネルギー消費量やCO2排出量、廃棄物発生量などが評価されます。

・環境品質(Q)建築物が利用者に提供する快適性や健康性を測る項目です。室内温湿度や照度、音環境などが評価されます。

・屋外環境(O)建築物が周辺地域に与える影響を測る項目です。景観や歩行者空間などが評価されます。

・環境貢献(C)建築物が地域社会や自然環境に対して積極的に貢献する活動を測る項目です。環境教育や生物多様性保全などが評価されます。

これらの評価項目は、建築物の種類や規模に応じて適切に選択され、評価ツールに反映されています。評価ツールは、CASBEE-新築、CASBEE-既存、CASBEE-改修、CASBEE-企画の4つの基本ツールと、CASBEE-戸建、CASBEE-不動産、CASBEE-ウェルネスオフィス、CASBEE-まちづくりなどの拡張ツールがあります。評価ツールは、評価マニュアルと評価ソフトで構成されており、評価マニュアルは各項目の評価方法や評点を説明しており、評価ソフトは入力したデータから自動的に評価結果を算出してくれます。
CASBEEの精度は、以下のような点で高いと言えます。評価項目は、国際的な基準や規格に準拠しており、科学的な根拠に基づいています。評価方法は、環境工学や建築工学の専門家によって開発されており、常に改良を重ねています。評価結果は、環境性能効率(BEE)という指標で表されることで、環境負荷と環境品質のバランスを考慮した総合的な判断ができます。評価員登録制度や評価認証制度によって、客観的かつ信頼性の高い評価を受けることができます。

CASBEEの活用事例

CASBEEは、建築物や街区、都市などの環境性能を向上させるための設計や運用の指針として活用されています。以下に、CASBEEの活用事例と成果についていくつか紹介します。日本国際博覧会長久手日本館(愛・地球博で使われたパビリオン)は、CASBEE-新築でSランクを取得しました。この建築物は、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用し、エネルギー消費量を大幅に削減しました。また、屋根には緑化が施され、周辺環境への配慮も行われました。この建築物は、博覧会終了後も公共施設として利用されており、地域社会への貢献も果たしています。

ZEB

ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、年間の一次エネルギー消費量が再生可能エネルギーの導入量と等しいかそれ以下になるように設計・建設された建築物です。ZEBは、省エネルギー性能を高めるとともに、太陽光発電などの自家発電設備を備えて、エネルギーの自給自足を目指します。ZEBは、温室効果ガスの排出削減やエネルギー安全保障に貢献するだけでなく、光熱費の削減や建物価値の向上、快適な室内環境や事業継続性の確保などのメリットもあります。

ZEBの特徴と国際的な進展

ZEBの特徴は、以下のようにまとめることができます。
ZEBは、建築物における負荷の低減と設備の効率化を図ることによりエネルギー需要を少なくし、最適な規模の再生可能エネルギー設備を導入していくことが合理的です。
ZEBは、計算上ゼロエネルギーのビルであり、実際にゼロエネルギーのビルではありません。つまり、年間の一次エネルギー消費量が再生可能エネルギーの導入量と等しいかそれ以下であればZEBとみなされます。
ZEBは、一次エネルギー消費量で評価されます。一次エネルギー消費量とは、電気や熱などの最終エネルギー消費量に対して、発電や輸送などにかかるエネルギーロスを加えたものです。
ZEBは、4段階に分類されます。ZEB Readyは超省エネビルであり、再生可能エネルギーは考慮しません。Nearly ZEBはZEBに近いビルであり、再生可能エネルギーで基準値から75%以上削減します。
ZEB Orientedは大規模な建築物を対象としたビルであり、用途ごとに設定された削減率を達成します。
ZEBは完全なZEBであり、再生可能エネルギーで基準値から100%以上削減します。ZEBは国際的にも注目されており、欧州連合(EU)では2020年以降に新築される公共建築物はNearly ZEB以上、2021年以降に新築されるすべての建築物はNearly ZEB以上とすることが義務付けられています。また、アメリカではカリフォルニア州が2020年までに新築住宅をZEH化し、2030年までに新築非住宅建築物をZNEB(Zero Net Energy Building)化することを目標としています。さらに、中国では2020年までに新築公共建築物の50%が超低エネルギービル(ULEB)となることを目指しています。

ZEBの厳しい基準と建築技術への影響

ZEBの厳しい基準と建築技術への影響ZEBの基準は、建築物の用途や地域によって異なりますが、一般的には非常に厳しいものです。
例えば、事務所ビルの場合、ZEB Readyの基準は基準値から50%以上削減することであり、ZEBの基準は基準値から100%以上削減することです。これは、一般的な事務所ビルに比べてエネルギー消費量を半分以下にすることを意味します。
また、再生可能エネルギーの導入量は敷地内で発電した分だけが対象であり、売電分も含めます。つまり、ZEBは自らエネルギーを作り出すだけでなく、余剰分を社会に還元することも求められます。ZEBの基準を達成するためには、建築技術の革新が不可欠です。ZEB化に向けて必要な建築技術は大きく3つに分けられます。負荷低減技術:建築物のエネルギー需要を低減するための技術です。例えば、高断熱・高気密化、日射遮蔽・自然採光・自然換気などのパッシブデザイン、高効率照明や機器などがあります。設備効率化技術:建築物のエネルギー供給を効率化するための技術です。
例えば、空調システムや給湯システムなどの高効率化、蓄熱・蓄電・蓄冷などのエネルギー管理システムなどがあります。再生可能エネルギー設備:建築物で利用するエネルギーを再生可能エネルギー源から得るための設備です。例えば、太陽光発電や太陽熱利用、風力発電や地熱利用などがあります。これらの技術を組み合わせて最適化することで、ZEB化が可能になります。しかし、それぞれの技術にはコストや性能、設置条件などの課題もあります。そのため、ZEB化に向けては、建築技術の開発や普及だけでなく、制度や支援策、啓発活動なども重要です。

ZEBの実現に向けた取り組みと未来展望

ZEBの実現に向けた取り組みとしては、以下のようなものがあります。
政府や自治体による普及促進策ZEBロードマップや脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップなど、ZEBの目標や方針を示す計画やガイドラインを策定しています。
ZEB化に関する補助事業や認証制度を実施しています。
例えば、経済産業省は「ZEB化推進事業」を通じて、民間企業や公共団体がZEB化する際の設計費や設備費などの一部を補助しています。
また、環境省は「ZEB認証制度」を通じて、ZEB基準に適合した建築物を認証し、その優秀性を広くアピールしています。
ZEB化に関する情報発信や啓発活動を行っています。
例えば、環境省は「ZEB PORTAL」を通じて、ZEBとは何かやZEBのメリットなどを分かりやすく解説し、ZEB化した事例紹介やイベント情報なども提供しています。
また、清水建設は「ZEBへの挑戦 ZEBで変える日本の未来」という特集記事を通じて、自社が手掛けたZEB事例や技術開発などを紹介し、ZEBの魅力や可能性を伝えています。
建築業界や研究機関による技術開発ZEB化に必要な省エネ技術や創エネ技術などを開発しています。
例えば、シミズは「SUSTIE」というZEB関連技術実証棟を建設し、地下水熱エネルギーを冷暖房・給湯・融雪の3つの熱需要に活用するトータル熱供給システムなどを導入し、「ZEB」を実現しています。
ZEB化に関する研究や評価方法などを検討しています。
例えば、東京工業大学は「東京工業大学 ZEBプロジェクト」という研究グループを立ち上げ、気候条件や建築形態に応じた最適なZEB化手法やコスト効果分析などを行っています。

ZEBの未来展望としては、以下のようなものが期待されます。
2050年カーボンニュートラルの実現ZEBは、温室効果ガスの排出を大幅に削減することができるため、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することができます。
政府は、地球温暖化対策計画において、2030年に目指すべき建築物の姿として、「新築される建築物についてはZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていること」を掲げています。また、ZEB化によって再生可能エネルギーの導入や利用効率の向上も促進されることが期待されます。
ZEBは、光熱費の削減や快適性の向上など、所有者や利用者にもメリットがあります。ZEB化することで、建築物の価値や魅力が高まり、不動産市場での競争力や資産価値が向上することが期待されます。また、ZEB化することで、事業継続性や災害対策などのリスク管理も強化されることが期待されます。
建築文化の変革ZEBは、建築物を単なるエネルギー消費者ではなく、エネルギー生産者として捉えることを可能にします。ZEB化することで、建築物と社会や自然との関係性や役割が変わり、建築文化やライフスタイルにも影響を与えることが期待されます。
ZEBは、建築物を通じて環境への配慮や持続可能性を表現することもできます。

CASBEEとZEBの評価基準やアプローチは異なりますが、それぞれが持つ強みや目指す方向性を理解し、適切に活用することが重要です。
CASBEEは、建築物の環境性能を多面的に評価し、その優秀性を広くアピールすることができます。
ZEBは、建築物のエネルギー消費を最小化し、再生可能エネルギーの導入や利用効率の向上を促進することができます。
CASBEEとZEBは相補的な関係にあり、両者を組み合わせることでより高い水準の建築物を実現することが可能です。

まず読みたい人気コラム

新着コラム

○○とは?基礎知識まとめ
おすすめ会社を一発選定!1分アンケートはこちらをClick!