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2022
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様々な省エネ・環境の判定・認証制度を分かりやすく解説

2000年に入ってから環境への関心が徐々に高まり始め、2010年前後には省エネ・環境の観点から建築物を評価する制度が次々と始まりました。
しかし、どれも似たような言葉で分かりにくさを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、特に新築物件についての様々な用語を、施工主や設計士の方々に向けて、分かりやすく解説していきます。

用語の整理と解説

本記事で取り扱う用語を下記に挙げます。

  • ZEB
  • ZEH
  • 省エネ適合性判定
  • CASBEE自治体
  • 住宅性能評価
  • BELS
  • CASBEE認証
  • DBJグリーンビルディング

上記用語を3つにグループ別けし、下記で解説していきます。

ZEB / ZEH

「ZEH(ゼッチ)」「ZEB(ゼブ)」は『年間一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建築物』を指す用語です。
ZEHは『Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)』の略称で、省エネ効率を高め、創エネ設備を実装することで、消費されるエネルギー量が創られるエネルギーの総量と同等か下回っている住宅のことを指します。
ZEBは『Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)』の略称で、ZEHの非住宅版のことです。

ZEH、ZEBは全部で4段階のレベルが設けられています。

〇ZEH/ZEBのレベル別け
※建物の省エネ性能について「消費エネルギー量=創エネルギー量」の時を100として下記の通りレベル別け

  • ZEH/ZEB:100以上
  • Nearly ZEH/Nearly ZEB:75以上、100未満
  • ZEH Ready/ ZEB Ready:50以上、75未満
  • ZEH Oriented/ZEB Oriented:40以上、50未満

※ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30以上でZEB Oriented

省エネ適合性判定 / CASBEE自治体

省エネ適合性判定とCASBEE自治体は一定条件に当てはまる建築物について取得義務が定められています。
概要は下記のとおりです。

  
判定の種類 省エネ適合性判定 CASBEE自治体
判定項目
  • 外皮性能
  • 一次エネルギー消費性能
<建物の環境品質•性能:Q>
  • 室内環境
  • サービス性能
  • 室外環境(敷地内)
<建物の環境負荷:L>
  • エネルギー
  • 資源、マテリアル
  • 敷地外環境
判定期間 所管行政庁
又は、登録省エネ判定期間
各自治体
(24自治体+東京都が実施)

省エネ適合性判定とは

省エネ適合性判定(適判)とは、法律上取得が義務付けられた省エネに係る制度のことです。
一定条件に該当する建築物においては省エネ適合性判定を取得しない限り、着工できません。

<取得義務の概要>

  • 非住宅部分が300㎡以上の建築が対象
  • 設計段階で建築物省エネ法に定められた基準を満たしていることが必要
  • 省エネ適合性判定を取得できなければ工事に着工すらできない

CASBEE自治体とは

CASBEE自治体とは、自治体ごとの条例に基づいて一定規模以上の建築物について届出が義務づけられているCASBEEのことです。
自治体ごとに内容や基準が異なりますので、届出制度を設けている自治体での施工では注意が必要です。

<届出制度を設けている自治体一覧>(施工日順)

     
自治体と施工時期
名古屋市:2004年10月 大阪市:2004年10月 横浜市:2005年7月
京都市:2005年10月 京都府:2006年4月 大阪府:2006年4月
神戸市:2006年4月 川崎市:2006年10月 兵庫県:2006年10月
静岡県:2007年7月 福岡市:2007年10月 札幌市:2007年11月
北九州市:2007年11月 さいたま市:2009年4月 埼玉県:2009年10月
北九州市:2007年11月 さいたま市:2009年4月 埼玉県:2009年10月
愛知県:2009年10月 神奈川県:2010年4月 千葉市:2010年4月
鳥取県:2010年4月 新潟市:2010年4月 広島市:2010年4月
熊本県:2010年10月 柏市:2010年1月 堺市:2011年8月

※東京都はCASBEEに評価項目が類似する独自の『環境計画書の届出義務』有り

住宅性能評価 / BELS / CASBEE認証 / DBJグリーンビルディング認証

住宅性能評価 / BELS / CASBEE認証 / DBJグリーンビルディング認証は、建築物の省エネ性能や環境性能などを評価する制度のことで、省エネ適合性判定やCASBEE自治体と異なり、取得は任意となります。

<評価制度の概略>

  
制度の種類 評価範囲 評価機関
住宅性能評価 住宅の総合的な品質 登録住宅性能評価期間
BELS 建築物の省エネ基準 登録省エネ評価機関
CASBEE認証 総合的な環境性能 CASBEE評価認証認定機関
DBJグリーンビルディング認証 総合的な環境性能 一般財団法人日本不動産研究所

後続でそれぞれについて解説します。

住宅性能評価とは

住宅性能評価とは、住宅の品質を総合的に評価する制度で、評価結果は「住宅性能評価書」という形で交付されます。
国交省などから登録を受けた評価機関に申請することで住宅性能評価を受けることが出来ます。
2019年度の新築住宅における設計住宅性能評価書の交付率は27.7%でした。運用開始翌年の2001年度と比べると約5倍に増加しており(2001年度は交付率5%)、住宅性能評価が徐々に浸透していることが分かります。

対象建物用途

対象となる建築物は、すべての住宅です。

評価項目

新築住宅で設定されている評価項目は以下の10項目です。

  1. 構造の安定(耐震性)●
  2. 火災時の安心
  3. 劣化の軽減(耐久性)●
  4. 維持管理・更新への配慮●
  5. 温熱環境・エネルギー消費量(省エネ性)●
  6. 空気環境
  7. 光・視環境
  8. 音環境
  9. 高齢者への配慮(バリアフリー性)
  10. 防犯

●のついている項目は必須評価項目となります。
なお、新築住宅の場合は交付される評価書が2種類あります。
「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」です。
「設計住宅性能評価書」はその名の通り設計図書などを元にした評価書で、「建設住宅性能評価書」は設計図書通りに施工されているかを現場検査で確認し交付される評価書です。
「設計住宅性能評価書」だけを取得し「建設住宅性能評価書」の取得を省略することは可能ですが、実際に住宅性能評価が効力を発揮するためには、設計時だけでなく実際に建てた後の住宅の性能評価も必要となるため、両方の評価書を取得するようにしましょう。

取得する意味

新築時に「設計住宅性能評価書」及び「建設住宅性能評価書」を取得するメリットについて、施工主や設計士の方々へ向けて解説していきたいと思います。
主なメリットは「買い手がつきやすくなる点」と「トラブルの際に紛争処理機関を利用できる点」の2つです。

まず「買い手がつきやすくなる点」についてです。
住宅性能評価書は、一般の方から見ても分かりやすい形で物件の品質を多面的に評価しているため、競合物件との差別化が図りやすくなります。
また、近年では一般の方の中でも環境意識が高まっているため、なおさら環境に配慮した物件であることを分かりやすく示す住宅性能評価書の価値は高まっています。

次に「トラブルの際に紛争処理機関を利用できる点」についてです。
住宅性能評価書を取得していれば、もし入居者とトラブルになったとしても、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請することが出来るなど、トラブルを解決しやすくなります。
これは、物件を第三者機関によって公正にチェックしてもらった結果、住宅の品質に問題が無いことを住宅性能評価書が立証してくれているためです。

BELSとは

BELSとは建築物の省エネ性能を分かりやすく星の数で表した評価制度の一種です。
Building-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略称で、建築物のエネルギー消費効率を評価します。

対象建物用途

BELSは住宅・非住宅関係なく、すべての建築物が評価対象です。

評価項目

BELSの評価項目は「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」です。
「一次エネルギー消費性能」の高さによって、最高レベル星5の5段階で評価されます。
<5段階の指標>
★5:一次エネ消費=20%以上 BEI=0.8以下
★4:一次エネ消費=15%~19% BEI=0.85~0.81
★3:一次エネ消費=10%~14% BEI=0.9~0.86
★2:一次エネ消費=0%~9% BEI=1.0~0.91
★1:一次エネ消費=-10%~-1% BEI=1.1~1.01
「一次エネ消費」と「BEI」はどちらも意味合いは同じで、環境省の定めた標準一次エネルギー消費量と比較したときに、実際に建てる建築物のエネルギー消費量がどれくらい削減されているかを示しています。
たとえば、★5の「一次エネ消費=20%以上」というのは標準一次エネルギー消費量を100としたときに、実際に建てる建築物のエネルギー消費量がその80%以下に抑えられていることを示します。

取得する意味

<住宅の場合>
BELS評価書を取得していることでZEH補助金を利用できるようになります。ZEHとは、一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指した住宅のことです。BELSはエネルギー消費性能を評価対象としているため、こうした補助金の交付要件にも取り入れられています。
また、BELSを取得することで、住宅市場において競合優位性が上がります。要因は様々ありますが、最も大きいのはエネルギーコストの削減でしょう。月々のランニングコストが下がるため、住む側からするとBELSで高評価を取得している建築物は非常に魅力的です。

<非住宅の場合>
非住宅の場合も同様に、BELS評価書を取得していることでZEB補助金を利用できるようになります。
また、非住宅部分が300㎡以上の建築物は省エネ適合性判定を取得する必要がありますが、これとBELSは評価項目が同じなため、併せて効率的に取得できます。
世間の環境配慮への関心が高まるにつれて、こうしたビルにテナントを構えることは一種のブランディングにもなっています。従って、BELSの取得はテナントを選ぶ際に決め手の一つになってきており、市場競争力の向上につながっています。

CASBEE認証とは

CASBEE認証とは、建築物を環境性能の面から総合的に評価し、5段階でランク付けする評価制度のことです。BELSのように省エネ性能だけでなく、環境に配慮した資材・機材の使用や、景観への配慮など、多岐に渡って総合的に建築物の環境性能を評価します。

対象建物用途

CASBEE認証は評価対象となる建物用途によって種類が分かれます。新築を対象とするCASBEE認証には下記の3種類があります。

  • CASBEE建築:戸建住宅を除くすべての新築物件に適用可能な評価システムで、一棟全体の環境性能を総合的に評価します。
  • CASBEE住宅ユニット:CASBEE建築が一棟全体を評価するのに対し、こちらは新築分譲マンションの住戸一つ一つを評価します。住戸がある階数や位置によって採光や通風などが異なるため、これに配慮した評価制度になっています。
  • CASBEE戸建て:こちらは新築戸建てを対象とした評価制度です。
評価項目

CASBEE認証の評価項目は「建築物の環境品質・性能:Q」と「建築物の環境負荷:L」です。Q/Lで評価結果を表し、分子のQの値が大きいほど、分母のLの値が小さいほど高く評価されます。「Sランク(素晴らしい)」「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」の5段階でランク付けします。

<建築物の環境品質・性能:Q>

  • 室内環境…騒音、温度、湿度、光、空気などの対策レベル
  • サービス性能…機能性、快適性、耐用性などの確保レベル
  • 室外環境(敷地内)…まちなみ、景観、屋外(敷地内)の生物環境などの配慮レベル

<建築物の環境負荷:L>

  • エネルギー…建物や設備の負荷レベル
  • 資源、マテリアル…資源浪費や有害物質の使用レベル
  • 敷地外環境…大気汚染、騒音、振動、悪臭などの発生レベル
取得する意味

CASBEE認証を取得するメリットは住宅と非住宅で異なります。

<住宅の場合>
一言で言うと「CASBEE認証を取得することで売りやすい物件」になります。
理由は下記3点です。

  • CASBEE認証の評価そのものが住宅の高い品質の証明になる
  • 環境ニーズに応えられる
  • 住宅ローンの金利優遇など販売しやすくなる制度がある

CASBEE認証は様々な住宅品質の専門的な観点をまとめて分かりやすく評価しています。従って、「CASBEE認証で高評価」=「長く住み続けられるいい家」と見られやすくなり、物件の市場競争力を上げることが出来ます。
加えて、近年ではCASBEE認証で高評価を受けた物件に対して地方自治体が住宅ローンの金利優遇施策を講じるようになっています。中には、全期間最大で1.5%以上の金利引き下げを行う制度もあります。こうした、優遇措置をうまく活用して販売に繋げられるのもCASBEE認証で高評価を受けた物件ならではのメリットです。

<非住宅の場合>
「テナントの入居先に選ばれやすくなる」というメリットがあります。
近年では環境に配慮したビルを優先的に選ぶテナントが増えてきています。企業の収益向上やイメージアップ、株主からの要請が主な要因です。
従って、CASBEE認証が高評価であることはテナント選定の強い決め手になりえます。

DBJ グリーンビルディングとは

DBJ グリーンビルディングとは、「環境・社会への配慮」がなされた建築物とその建築物を所有・運営する事業者を支援する取り組みとして2011年に創設された評価制度です。
CASBEEよりももっと投資価値の観点から評価できるように制定したもので、日本政策投資銀行が創設主です。

対象建物用途

現在は〈オフィスビル〉〈ロジスティクス〉〈リテール〉〈レジデンス〉の4種類を対象に展開しています。

評価項目

社会・経済に求められる建築物を総合的に5つの観点で評価します。
5観点、全84項目で評価し、最終的に星5から星1の5段階で総合評価が決まります。

  1. Energy&Resources=建築物の環境性能
    これは、建築物の省エネ性能や再エネ性能、節水などいわゆる省エネに関する評価項目です。
  2. Resilience=危機に関する対応力
    これは、耐震性能や備蓄、警備体制など、天災時の備えや防犯対策といった、有事の際の対応力を評価します。
  3. Partnership=ステークホルダーとの協働
    これは、ステークホルダーとの関係性や環境啓発活動への貢献といったパートナーシップや開示活動を評価する項目です。
  4. Amenity=テナント利用者の快適性
    これは、設備仕様や環境だけでなくそこを利用する人々への健康配慮といった、利便性・空間快適性を評価する項目です。
  5. Community&diversity=多様性・周辺環境への配慮
    これは、建物外も含めた利用者の多様性創出や景観への貢献、地域との積極的関わりを評価する項目です。
義務とメリット

DBJグリーンビルディングの取得メリットは主に2点です。

  1. 建築物の市場競争力が高まる
  2. 賃料単価アップにつながる

DBJグリーンビルティング認証は星の数に関係なく、取得しているだけで、優れた建築物への取組みがなされた物件であると世間に評価してもらえるため、認証のない建築物と明確に差別化することが出来ます。
また、近年ではテナントが入居先を選ぶ際に環境に配慮したビルを優先的に選ぶ傾向が強くなっています。従って、DBJグリーンビルディングを取得することでテナント物件の市場競争力を高めることが出来ます。

加えて、一般財団法人日本不動産研究所による「不動産投資家調査」によれば、DBJグリーンビルディングを取得しているようないわゆる『ESG不動産』はそうでない不動産と比べ10年後には最大で6~10%賃料が上がるのではないか、という調査結果が出ています。

このように様々なメリットを生み出すDBJグリーンビルディング認証の取得は、今後もますます拡大していくことが予想されています。

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