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2023
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SDGsと建築について。持続可能な社会のためにできること

SDGs(持続可能な開発目標)とは

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までにより良い世界を作るための国際的な指針です。2015年に国連で採択され、17のゴールと169のターゲットで構成されています。この目標は、誰一人取り残さないという理念に基づき、発展途上国だけでなく先進国も対象としており、日本もこのSDGsに積極的に取り組んでいます。

SDGsは2001年に始まったミレニアム開発目標(MDGs)の後継として登場し、地球と人々が共に持続可能な形で生きていくための共通の目標を定めています。

17のゴールについて

SDGsの17のゴールは、社会的、環境的、経済的な課題に対処するため、国際社会が協力して制定した目標群です。これによって、各国やさまざまなセクターは共通の問題認識を持ち、具体的な行動を促されます。さらに、これらの目標を達成する過程で、持続可能な発展が促され、社会や環境、経済のバランスがよくなることが期待されます。具体的なターゲットが設定されているため、効率的に課題解決が進む可能性が高く、これが格差削減や国際平和の確立にも寄与するとされています。

【SDGs17のゴール】

1. 貧困をなくそう:経済的な支援や教育を通じて、極度の貧困を解消する。

2. 飢餓をゼロに:食糧供給の安定化と分配の公平化。

3. すべての人に健康と福祉を:医療サービスの普及と予防医学の促進。

4. 質の高い教育をみんなに:教育格差の解消と教育内容の質向上。

5. ジェンダー平等を実現しよう: 性別による差別の撤廃と女性のエンパワーメント。

6. 安全な水とトイレを世界中に:衛生環境の整備と水資源の保全。

7. エネルギーをみんなに。そしてクリーンに:クリーンエネルギーの普及と効率的なエネルギー使用。

8. 働きがいも経済成長も:雇用の創出と労働条件の改善。

9. 産業と技術革新の基盤を作ろう:インフラ整備と持続可能な技術開発。

10. 人や国の不平等をなくそう:経済的、社会的な格差の削減。

11. 住み続けられるまちづくりを:都市計画の持続可能性と安全性の向上。

12. つくる責任、つかう責任:リソースの効率的な使用と廃棄物削減。

13. 気候変動に具体的な対策を:温室ガス削減と気候変動適応策。

14. 海の豊かさを守ろう:海洋生態系の保全と持続可能な利用。

15. 陸の豊かさも守ろう:陸上生態系の保全と持続可能な森林管理。

16. 平和と公正をすべての人に:法の支配と全ての人々の平等なアクセスを保障。

17. パートナーシップで目標を達成しよう:国際協力と多層的な関係性の強化。

これらは独立した目標ではなく、相互に関連しています。一つの目標達成が他の目標にも良い影響を与えることが多いです。

SDGsと建築の関係

SDGsと建築は密接に関わっています。建築活動は多くのリソースを消費し、環境に大きな影響を及ぼす可能性がありますが、持続可能な設計や施工手法を採用することで、これらの影響を最小限に抑えられます。17のゴールのうち、具体的に関係している項目と建築上の対策は以下の通りです。

  • 貧困をなくそう:低コストで質の高い住宅を提供して貧困層の生活向上に直接貢献する。
  • すべての人に健康と福祉を:病院や健康施設を建設し、居住環境の健康への影響を配慮する。
  • ジェンダー平等を実現しよう:公共施設や住宅において、ジェンダーに配慮した空間設計を行う。
  • 安全な水とトイレを世界中に:インフラ建設での水資源管理と衛生環境の整備を行う。
  • エネルギーをみんなに。そしてクリーンに:エネルギー効率の高い建築や再生可能エネルギーを活用する
  • 働きがいも経済成長も:オフィスや工場等の効率的な設計が、働きがいや生産性向上につながる。
  • 住み続けられるまちづくり:地域社会や環境に配慮した持続可能な都市計画。
  • つくる責任、つかう責任:建材の選定やリサイクル、廃棄物管理。
  • 気候変動に具体的な対策を:省エネ・低炭素な建築で温室ガス排出削減。
  • パートナーシップで目標を達成しよう:様々なステークホルダーと協力し、持続可能な建築を推進する。

このようにして、建築はSDGsの様々な目標達成に貢献できます。

建設業のあるべき姿

建設業はただ建物を作るだけでなく、その全過程で持続可能性を追求すべきです。SDGsの観点から見ると、建設業が与える影響はとても大きいためです。具体的には、エネルギー効率の高い設計、持続可能な建材の利用、労働環境の改善、再生可能エネルギーの導入などが有効です。また、地域社会と調和した持続可能な都市開発を目指すことで、地域全体の生活品質が向上する可能性もあります。建設業は他の産業と連携し、多様なステークホルダーと協力することで、より幅広い持続可能性の観点を取り入れられます。

SDGsに取り組むメリット

SDGsに取り組むメリットは以下の通りです。

  • 企業のイメージアップにつながる
  • 社会貢献ができる
  • コストを削減できる
  • 優秀な人材が集まる
  • ビジネスの場が広がる

以下にて詳しく解説します。

企業のイメージアップにつながる

SDGsへの取り組みは企業イメージを向上させます。理由として、現代の消費者は企業の商品やサービスの質だけでなく、その企業が持つ社会的責任にも注目しているからです。例えば、持続可能な素材を使用する、エネルギー効率の高い生産方法を採用するなど、SDGsに照らし合わせた取り組みをしている企業は消費者から高く評価されます。これが顧客基盤を拡大し、企業の信頼性を高める結果を生むのです。したがって、SDGsに積極的に取り組むことで、企業は市場での信頼を高め、持続可能な成長が期待できます。

社会貢献ができる

SDGsに取り組むことは、企業にとって社会貢献を実現する手段となります。多くのSDGsの目標が地球や社会全体の改善に寄与するからです。たとえば、企業が人工林からとれた木材などの持続可能な素材を採用すると、それが環境保護につながる具体的な行動となります。CSR(企業の社会的責任)の観点からも、SDGsに取り組むことは企業が社会と誠実に関わる証しとなります。このような取り組みは消費者やビジネスパートナーからの信頼を高め、地域社会との協力関係を強化する効果もあります。

コストを削減できる

SDGsに取り組むことは企業にとってコストを削減できる有効な手段です。その理由は、持続可能な活動が長期的に運用コストの低下やリスクの軽減につながるためです。例として、再生可能エネルギーの導入などのエネルギー効率を高める投資は、時間が経つとそのコストが回収される場合が多く、最終的には運用コストの削減に寄与します。このようなコスト削減は、企業が更に持続可能な活動に投資する余裕を生むだけでなく、企業の競争力を高める要素ともなるでしょう。つまり、SDGsに取り組むことでコスト削減が実現され、その結果、企業が社会にもより多く貢献できるという好循環が生まれます。

優秀な人材が集まる

SDGsに取り組むことは企業にとって、優秀な人材を引き寄せるきっかけになります。なぜなら、多くの優秀な人材が企業の社会的・環境的な責任を重視しているからです。SDGsに取り組む企業は、社会貢献や環境保護に対する真剣な姿勢を見せることで、価値観が一致する人材を引きつける可能性が高まります。これによって、企業はより資質の高い人材と連携し、その結果、業績向上や新しいイノベーションを生む機会も増えるでしょう。SDGsへの取り組みは優秀な人材の獲得という形で、企業の持続的な成長に寄与します。

ビジネスの場が広がる

SDGsに取り組むことは企業にとってビジネスの場が広がる可能性をもたらします。この理由は、SDGsに対応したビジネスモデルや製品は多くの市場で高い需要があるからです。具体的には、環境に優しい製品やサービスは、今や多くの消費者によって求められており、新しい市場への進出や業界間でのパートナーシップも容易になります。ビジネスの場が広がることで、企業は新たな仕事を得られ、さらに大きく成長するチャンスが広がります。

SDGsに取り組む建築の例

SDGsに取り組む建築の事例を紹介します。

  • UN17village(デンマーク)
  • Circl(オランダ)
  • W350(日本)

UN17village(デンマーク)

「UN17 Village」はデンマーク、コペンハーゲンの南部で進行中のエコビレッジプロジェクトです。名前の「UN17」は、国連が定めた17のゴール(持続可能な開発目標)に由来しています。このプロジェクトはただ環境に優しい建物を作るだけでなく、持続可能なライフスタイルそのものを形成することを目的としているところです。

このエコビレッジは約35,000平方メートルの土地に400軒の住宅を計画しており、約800人が住めます。建材にはリサイクルされたコンクリート、木材、ガラスなどが使われ、全体のエネルギーは太陽光発電で賄われ、雨水も再利用される予定です。

プロジェクトの主体は、環境と資源の効率化に早くから取り組んでいるデンマークの建築事務所、Lendager Groupです。このエコビレッジには共同キッチンやワークスペース、ゲストハウスなども含まれ、多様なライフスタイルに対応した設計がされています。

最終目標は、持続可能なライフスタイルが選べるようなコミュニティを形成し、それを通して「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を実現すること。このエコビレッジプロジェクトは、新しい持続可能な都市づくりのモデルケースとして、世界中から注目されています。

Circl(オランダ)

オランダのABN AMRO銀行がアムステルダムに設立した「CIRCL」は、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を基盤とした多機能施設です。一般の市民も気軽に訪れることができ、会議室、イベントホール、カフェなどがあります。特筆すべきは、施設自体も再利用材料で作られており、環境への影響を最小限に抑えている点です。

たとえば、床材はリサイクル木材、コンクリートにも30%はリサイクル製品が使用されています。日本発の「アーバンマイニング」の考えを取り入れ、廃棄物を資源として再利用しています。受付デスクはシュレッダー文書から作られており、エレベーターは使用量に応じた課金制度を採用。これにより、階段使用が促されるとともに、エネルギー消費を抑制しています。その他、雨水タンクの利用や太陽光発電を利用したUSBポートなど、至るところでサステナビリティが強調されています。レストランでは、廃棄食材や空港で撃たれた鳥の肉を使った料理が提供されるという徹底ぶりです。

以上のような独自の取り組みで、CIRCLは持続可能な未来への貢献と、他の企業や個人に対する啓発活動を行っています。この施設は新しい働き方や持続可能な未来について考えるきっかけともなっており、他の企業やオフィスにとって参考になる点が多々あります。

W350(日本)

住友林業が提案する「W350計画」は、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む建築の優れた例です。2018年に発表されたこの野心的な計画では、2041年に350mの木造超高層建築物を完成させることを目指しています。筑波研究所を中心とした専門チームが、木造建築の新たな可能性を探るために研究を進めています。

設計面では、木と鋼材のハイブリッド構造が採用され、環境と調和するよう努力されています。特に、緑豊かな空間が設計されており、都市の生物多様性にも寄与するでしょう。この計画が掲げる二つの主要な目的は、地球環境と社会との共生です。CO2の固定、森林資源の有効利用、地方活性化に対する貢献が期待されています。

建築コストは約6,000億円ですが、技術開発によるコストダウンが期待されています。この計画は、SDGsに寄与する多角的なメリットが見込まれています。

SDGsに取り組まないリスクは?

SDGsに取り組まないリスクは多面的です。環境的な問題に対処しなければ、気候変動や資源枯渇が進行するため、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組むことが企業の責任という風潮になっているからです。企業の社会的責任を果たさなければ、企業のイメージが低下し、顧客や投資家からの支持を失う可能性があります。

また、多くの国が環境や社会に配慮した法制度を強化しており、SDGsに対応していない企業は、罰則や業務制限を受ける可能性が高くなります。さらに、競争力の観点からも、持続可能性を重視する企業と比較してビジネスチャンスを逃がす危険性があります。

SDGsに取り組まないことは、環境、社会、経済の各面でリスクが高まると言えます。

まとめ

建築業界は様々な方法でSDGsに貢献可能です。環境に優しい材料の選定、エネルギー効率の高い設計、さらには地方産材の使用で地域経済を活性化するなど、すぐに取り組めることもたくさんあります。環境への配慮は、企業の競争力強化や信頼性向上にもつながるため、持続可能な社会づくりとビジネスの成功はお互いに促進する関係にあります。

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