「CASBEE」とは、「建築環境総合性能評価システム」という意味を持つ言葉です。
個別の建物の地球環境にかける負荷の少なさや省エネルギー性能を評価するもので、2001年から日本で実施されました。客観的な視点で、「その建物が環境に対してどのような影響を与えているのか」を知るための指標であり、さまざまな建物でこれが使われています。
CASBEEには、S・A・B+・B・Cの5つの評価があります。高い評価を得ている建物や、その建物を運用する企業はESG投資の対象となりやすく、また企業イメージも良くなるというメリットがあります。
なお、CASBEEには、
・新しく建てる物件を対象とする「CASBEE建築評価」
・すでに建っている既存の建物を評価する「CASBEE不動産評価」
・オフィスビルなどで、働く人の健康性や快適性を評価する「CASBEEウェルネスオフィス評価」
の3つがあります。
省エネや地球環境保全を考えて作られた制度のなかには、「これを取り入れようとしている物件・人・企業に対して補助金を出す」としているものも多くあります。この補助金制度は、その制度が広く知らしめて、浸透させることに非常に役立ちます。
ただ、残念ながらCASBEEには、国からの補助金制度はありません。
CASBEEと同じ省エネや地球環境保全を考えて作られた制度のなかには、補助金があるものもあります。たとえば、「ZEH制度」などがそれです。なお、ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を意味する言葉であり、建物の断熱性能を上げたうえで、室内環境の設備を整えることで、一次エネルギーの収支を±0にすることを目指した建物をいいます。
国は、これに対しては「ZEH支援事業」「超高層ZEH-M実証事業」として、補助金を出していました。ちなみに2021年の場合の補助額は、最大で10億円/1事業 にも及んでいました。
今後CASBEEもZEH制度と同じように補助金の対象制度となる可能性はゼロではありません。しかし、繰り返しにはなりますが、2023年12月末日現在は、CASBEEに対しては国からの補助金は出されていないことを押さえておきましょう。
「CASBEEについては、国からの補助金はない」としました。しかしこれはあくまで「国からの補助金がない」ということであって、「公的な機関からの補助金が一切出されていない」ということとはイコールではありません。
なぜなら、国からの補助金はなくても、地方自治体が独自にCASBEEに対する補助金を出しているケースがあるからです。ここでは、CASBEE制度を導入している物件・企業などに対して補助金を出している地方自治体と、その取り組み内容の一部を紹介していきます。※情報はすべて、令和5年12月末日のものです。
「CASBEEについては、国からの補助金はない」としました。しかしこれはあくまで「国からの補助金がない」ということであって、「公的な機関からの補助金が一切出されていない」ということではありません。
なぜなら、国からの補助金はなくても、地方自治体が独自にCASBEEに対する補助金を出しているケースがあるからです。
ここでは、CASBEE制度を導入している物件・企業などに対して補助金を出している地方自治体と、その取り組み内容の一部を紹介していきます。
※情報はすべて、令和5年12月末日時点のものです。
・神奈川県川崎市
神奈川県川崎市では、「CASBEEの制度を用いて戸建て住宅を建てた場合、その内容を確認後公表する」としています。これによって、広告などで「CASBEE-A評価」などのような謳い文句を掲げることができるようになります。
また、川崎市では「スマートハウス補助金」制度を実施しています。この条件に合致する住宅で、かつCASBEEのA評価に相当する物件を有する人に対しては、追加で補助金を支払うという制度をとっています。
ただ川崎市の場合は、「CASBEEの制度だけを利用した物件に関しては、補助金の申請はできない」としています。また補助金には限度額があり、市の定める一定額に達した場合は、補助金申請の申し込みを行うことができなくなります。なお川崎市は「令和5年度の受付は終了している」としています。令和6年以降に関しては、実施の可否や概要についての発表を4月以降に行うとしているので、川崎市に住んでいる人は注視しておくとよいでしょう。
出典:
川崎市「令和5年度川崎市スマートハウス補助金」
https://www.city.kawasaki.jp/300/cmsfiles/contents/0000139/139049/R5Tebiki_v2.pdf
茨城県つくば市では、「新築物件であり、かつ下記のすべてに該当する物件を建てた場合、その物件に対して補助金を支払う」としています。
その条件とは、
・つくばSMILeハウスレベル3であること
・BELS評価(省エネ性能を客観的に評価する指標のうちのひとつ)を取得してから、1年以内の物件であること
・過去に、この奨励金や、つくば市炭素ガイドラインの認定補助金の対象となったことがあること
の3要素です。
このなかでCASBEEと直接的に関わるのが、「つくばSMILeハウスレベル3」です。つくばSMILeハウスレベル3に該当するための要素として、「CASBEE一戸建て(新築)で、環境効率ランクSなどの評価を受けていること」が入っているのです。これをクリアした場合、補助金として10万円が受け取れます。
なお、つくば市の補助金については、「受付件数」が設定されています。先着順で受けつけ、限度数を超えたものに関しては受付できないとしています。ちなみに令和5年度は220件まで引き受けるとしています。
出典:つくば市「令和5年度 つくば市の基準を満たす低炭素住宅への認定及び認定取得者への奨励金」
https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/seikatsukankyobukankyoseisakuka/gyomuannai/1/1/evm-Subsidy/13384.html
長野県長野市では、「環境配慮型住宅助成金」という形で、CASBEEに関係する補助金を出しています。
これは、「CASBEEでS評価」「子どもが同居」「長野県で作られた建材を、1㎡あたり0.16㎡使用」「若手大工およびその指導者が施工にあたること」などのような複合条件を満たした場合に支給される補助金です。
6つの項目のうちの3つを満たせば20万円が、6項目を満たせば50万円の補助金が出ます。
複合条件ではあるものの、もらえる補助金の額が比較的大きいため、該当する人は積極的に利用するとよいでしょう。
出典:長野市「〇断熱化の助成金等について」
https://www.city.nagano.nagano.jp/documents/12687/366988_1.pdf
CASBEEに関する補助金制度を実施している地方自治体は数多くあり、そのなかには具体的な金額を提示しているところも見られます。
しかし一方で、具体的な内容は紹介せず、「優遇措置を受けられることもある」という案内に留める地方自治体もあります。
たとえば、愛知県名古屋市がそうです。
愛知県名古屋市では、「CASBEEを基本土台として作られた名古屋市用の『CASBEE名古屋』を用いて、建物を評価する。これの評価に応じて、一部金融機関では優遇措置を受けられる可能性がある」として、信用金庫や農業協同組合などを紹介しています。また、その問い合わせ窓口についても案内をしています。
不動産の購入・運営を考えるうえで、金利の優遇措置は非常に大きな意味を持つものです。直接的な「支援金」ではありませんが、該当するようならば、これらの金融機関に掛け合ってみてもよいでしょう。
出典:名古屋市「建築物環境配慮制度(CASBEE名古屋)の概要」
https://www.city.nagoya.jp/jigyou/category/39-6-3-10-5-0-0-0-0-0.html
CASBEEは、国からの補助金こそ対象外であるものの、地方自治体にまで目を向ければ、これに関連する補助金や優遇措置を実施しているところが多く見られることに気づくはずです。建物を建てたい・建物を運用したいと考えている場合は、建設予定地の地方自治体がこのような補助金制度を実施しているかどうかをまず確認するとよいでしょう。
なお、CASBEEなどに代表される省エネ計算・環境性能認証は、自分たちで行おうとするとなかなか大変なものです。これを受けたい人は、専門家の手に委ねた方が効率が良いでしょう。▶https://www.shoenekeisan-kankyoninsho.com/