住宅性能評価書は、住宅の安全性や快適性を数値で示す重要な証明書です。その評価の内容は多岐にわたり、理解するのが難しいと感じる方も多いでしょう。この記事では、その評価項目やメリット、取得方法について解説します。住宅性能評価書の意義を理解し、より良い住まい選びの参考にしてください。
住宅性能評価書は、建築される住宅の性能を公正に評価するための公式な文書です。耐震性や断熱性など、住宅の安全性や快適性に関わる多くの項目が評価されます。この評価は、第三者機関によって行われ、客観的な立場から住宅の品質が保証されます。結果は、住宅取得者にとって大切な判断材料となり、また、住宅ローン控除などの制度利用に際しても必要な書類となることがあります。住宅性能評価書は、住宅の安心・安全を確保するための重要なツールです。
住宅性能評価制度には、設計段階評価と建設段階評価の二つがあります。設計段階評価は、建築予定の住宅の設計図を基に、計画されている性能が基準を満たしているかを評価します。これにより、建設前に住宅の品質を確保できます。一方、建設段階評価は、実際に建築が進行している中で、設計通りに施工されているかをチェックします。この評価により、設計の意図が正しく反映されているかを保証します。両評価を通じて、建築される住宅の品質を高め、居住者の安全と快適性を確保する目的があります。
住宅性能評価の項目や等級について解説します。
住宅性能評価は、10の重要な項目を基準に家の質を総合的に評価します。
これらは、住宅の安全、快適さ、経済性、持続可能性の判断基準として重要な項目です。
この10項目のうち、必須項目は「構造の安定」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境」の4項目です。これらが必須項目とされる理由は、住宅の長期的な安全性と快適性に特に影響が大きな項目だからです。
任意項目の選択については、申請者のニーズや予算、住宅の立地条件、環境への配慮などに応じて選べます。例えば、バリアフリー設計や省エネルギー設計に重点を置きたい場合は、それらに関連する任意項目を選択することで、住宅の機能性や環境適応性を評価できます。また、将来の売却や資産価値の向上を考える場合、市場のニーズに合った任意項目を選ぶことも重要です。
住宅性能評価制度における各項目の等級は、それぞれ1〜7のレベルで示されます。
1. 構造の安定:
1-1. 耐震等級: 1〜3
1-2. 耐震(損傷防止): 1〜3
1-3. 免震建築物の有無
1-4. 耐風等級: 1〜2
1-5. 耐積雪等級: 1〜2
1-6. 地盤・杭の許容支持力等
1-7. 基礎の構造方法及び形式等
2. 火災時の安全:
2-1. 感知警報装置設置等級(自住戸火災時): 1〜4
2-2. 感知警報装置設置等級(他住戸等火災時): 1〜4
2-3. 避難安全対策: 1〜3
2-4. 脱出対策
2-5. 耐火等級(開口部): 1〜3
2-6. 耐火等級(開口部以外): 1〜4
2-7. 耐火等級(界壁及び界床): 1〜4
3. 劣化の軽減:
3-1. 劣化対策等級(構造躯体等): 1〜3
4. 維持管理・更新への配慮:
4-1. 維持管理対策等級(専用配管): 1〜3
4-2. 維持管理対策等級(共用配管): 1〜3
4-3. 更新対策(共用排水管): 1〜3
4-4. 更新対策(住戸専用部)
5. 温熱環境・エネルギー消費量:
5-1. 断熱等性能等級: 1〜7
5-2. 一次エネルギー消費量等級: 1〜6
6. 空気環境:
6-1. ホルムアルデヒド対策: 1〜3
6-2. 換気対策
6-3. 室内空気中の化学物質の濃度等
7. 光・視環境:
7-1. 単純開口率
7-2. 方位別開口比
これらの指標は、建物の安全性、快適性、維持容易性を評価し、消費者が賢明な選択を行うのを支援するために設定されています。
(参考:国土交通省「新築住宅の住宅性能評価制度かんたんガイド」)
住宅性能評価を採用すると複数のメリットを享受できます。
住宅性能評価書の取得により、税制上の優遇措置が受けられる点は大きな魅力です。この評価書は、長期優良住宅認定の重要な一歩となり、住宅ローン減税の期間延長や固定資産税の軽減など、数多くの税制メリットを受けられるようになります。これにより、国が推進する高品質で持続可能な住宅建築を実現し、長期的に安全で快適な居住空間を確保する基盤となります。
住宅性能評価書の取得がもたらすもう一つのメリットは、住宅ローンや火災保険料の削減です。評価書は住宅の耐久性や安全性を示すものであり、金融機関や保険会社からの信頼が得られます。例えば、性能評価書を持つ住宅向けに低金利ローンを提供する金融機関や、耐震性能が高い住宅に保険料割引を適用する保険会社が存在します。これにより、評価書はローンや保険のコスト削減に役立ちます。
住宅性能評価書は、資産価値を高める有力な手段です。耐震性や省エネルギー性の高い性能評価は、住宅価値の長期的な保持や性能向上に寄与し、将来的な売却や賃貸においても、有利な条件を引き出せます。これにより、住宅性能評価書は、長期的な経済的利益へとつながる重要な資産となります。
住宅性能評価書の取得者には、建築関連のトラブル発生時に公正な解決を支援する紛争処理機関の利用が可能です。評価書が交付された住宅に関する紛争には、住宅紛争処理支援センターが対応し、請負契約や売買契約に関連するあらゆる問題を取り扱います。手数料は1件あたり1万円と手頃であり、専門家による適切な紛争解決をサポートします。これは、建築トラブル時の安心感を提供する価値ある選択肢と言えるでしょう。
住宅性能評価には以下のデメリットがあります。
住宅性能評価には多くのメリットがありますが、デメリットも把握したうえで計画するようにしましょう。
住宅性能評価書を取得する際のデメリットの一つに、申請費用が必要となる点が挙げられます。設計住宅性能評価書のみの場合、およそ10万円の費用がかかります。さらに、建設住宅性能評価書も合わせて取得する場合は、その申請費用は約20万円に上ることがあります。この費用は住宅の質を保証するための投資と言えますが、初期費用としては無視できない額です。また、評価を受ける項目や等級によっては、申請費用以外に追加工事が必要となり、その分の費用も考慮する必要があります。
住宅性能評価書を取得する際の一つのデメリットとして、申請や検査に時間がかかることが挙げられます。これは、設計性能評価において3〜4週間、建設性能評価においては検査の2週間前までに申請を終える必要があるためです。この時間が、建設プロジェクト全体のスケジュールに影響を及ぼす可能性があるため、慎重な計画が必要です。したがって、住宅性能評価書の取得を検討する際は、申請や検査にかかる日数を予め考慮し、プロジェクトのスケジュールに余裕を持たせることが重要です。
住宅性能評価書は以下のステップで取得できます。
住宅性能評価書の取得は専門的な知識を必要とし、手間もかかります。設計段階から建設段階にかけて、一連のプロセスを経る必要もあるため、手続きを代行してくれる申請会社に任せることをおすすめします。
住宅性能評価書は、住宅の品質や性能を客観的に示す重要な指標です。第三者機関の客観的な評価を受けられるため、建築会社や購入予定物件への疑問を晴らすにはとても良い手段となります。また、数多くのメリットがあるため、評価書の取得は現代の家づくりに欠かせないものとなっています。高い住宅性能を確保し、住まいに安心安全を求める方は住宅性能評価書を活用しましょう。