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2023
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サステナブル建築とは?環境を守る建物の特徴を解説!

サステナブル建築とは?

サステナブル建築とは、未来の世代へ資源や環境を残すことを目的とした建築手法です。環境配慮、建物の長寿命・耐久性、地域の文化や風土の尊重、住民の健康と快適性、そして経済性を重視しています。サステナブル建築は、環境問題の解決と、生活の質向上の双方を目指しており、未来を見据えている建築といえます。

日本での取り組み

日本では、法制度や政策、認証制度の導入などによりサステナブル建築が推奨されています。特に、2018年の省エネ法の改正や、2030年に向けてのZEHの普及目標など、環境やエネルギーに関する取り組みが増えてきました。また、技術や材料の面でも環境負荷の低い建築材料の開発や再生可能エネルギーの導入が進められています。

海外での取り組み

海外におけるサステナブル建築の取り組みは、日本と比較してとても進んでいます。多くの国や地域で、高い認知度を持つLEEDやBREEAMといった緑の建築認証制度が活用されています。また、厳格化されたエネルギー効率基準や再生可能エネルギーの積極的な導入、先進的な都市計画が進行中です。特に北欧諸国やドイツでは、革新的なサステナブル都市やパッシブハウスの取り組みが目立ちます。建築教育の分野でも、サステナビリティを組み込んだカリキュラムが増加しており、次世代の専門家たちが持続可能な建築の考え方を基本から学んでいます。

サステナブル建築の設計指針

サステナブル建築を実現するために、一般社団法人日本建設業連合会が定めた設計指針があります。これで示される3つの設計配慮項目と5つの設計指針は以下の通りです。

設計配慮項目(環境対応の視点)

  • 地球の視点
  • 地域の視点
  • 生活の視点

設計指針(設計責任と説明責任)

  • 建物に対して
  • 事業に対して
  • 人に対して
  • 社会に対して
  • 造り方に対して

これらは具体的に、どのような理念と道筋で建築の設計活動を進めるべきかについて項目を分けて詳細に示しています。

設計配慮項目(環境対応の視点)

サスティナブル建築はたくさんの視点をもち、設計を行う必要があります。こちらでは、各視点で考えたときに意識しなければいけない課題をピックアップしています。

地球の視点

地球の視点でのサステナブル建築の設計は、資源の有限性や許容限界を認識し、持続可能な形での開発を追求しなければいけません。具体的な配慮項目は以下の6つです。

  1. 省CO2、節電:建築物が消費するエネルギーを最小化します。CO2の排出削減と電力の節約、ピークカットなどが実現します。
  2. 再生可能エネルギー:再生可能エネルギーの活用を推進し、創エネを行います。太陽光発電などを中心に固定買取制度を活用します。
  3. 建物長寿命化:長持ちし、長期間にわたって使用できる建築を目指します。メンテナンスにかかる工事や建て替えが減ると、エネルギー消費を抑制してCO2排出を削減できます。
  4. エコマテリアル:リサイクル材などを活用し、CO2の排出削減や環境負荷に配慮した材料を奨励します。
  5. ライフサイクル:設計から廃棄に至るまでの建築の全プロセスにおいて、一貫したライフサイクル・マネジメントを導入します。運用時や廃棄時のことまで考えることで持続可能性を高めます。
  6. グローバル基準:世界的に認知されている性能評価基準(LEED、Energy Starなど)に対応し、国際的な基準を満たすような設計を行います。

これらの設計配慮項目を適切に取り入れることで、地球にやさしい、持続可能な建築が実現します。

地域の視点

地域の視点でのサステナブル建築の設計は、その地域独自の環境やネットワーク、特色を尊重し、地域にとって持続可能な開発が重要です。

  1. 都市のヒートアイランド抑制:都市部の温度上昇を抑えるために、建築や周辺環境の緑化を推奨します。保水床の採用、散水などの活用など、ヒートアイランド抑制に有効な様々な取り組みを推進します。
  2. 生物多様性への配慮:その地域の動植物の生態系を尊重し、生態系ネットワークを考慮します。緑地化はもちろん、既存の森や川などの自然を尊重します。
  3. 自然・歴史・文化への配慮:地域の景観や歴史、文化を尊重し、その特色を損なわない設計や地域コミュニティとの協力を進めます。埋蔵物や建造物を保存するほか、色彩の配慮や地域材の活用なども有効です。
  4. 地域や近隣への環境影響配慮:土壌、大気、水質の汚染防止、交通量や日影、騒音、振動、臭気などの影響を最小限に抑える設計や取り組みを行います。土壌汚染を防止するための汚染調査、土砂管理、日影の影響に配慮した日影規制などが該当します。
  5. エネルギーネットワーク化:地域に適したエネルギー供給・管理システムを導入し、持続可能なエネルギーネットワークの実現を目指します。具体的には、地域全体のエネルギー使用状況を把握できるCEMS(コミュニティ・エネルギー・マネジメント・システム)や、電力を効率的に管理するスマートグリッド、地域内でエネルギーを有効活用するマイクログリッドなどがあります。
  6. 地域防災・地域BCP:自然災害時の防災やライフラインの確保を考慮した設計を行います。事業継続性計画(BCP)のほか、地域全体で連携するためのコミュニケーションツールや情報共有システムの整備も重要です。

これらの設計配慮項目を取り入れることで、地域の特色や環境を守りながら、持続可能で地域に根ざした建築を実現できます。

生活の視点

生活の視点でのサステナブル建築の設計は、我慢で実現する省エネではなく、快適なうえで実現する省エネを追求します。

  1. 安全性:平常時の防犯、事故防止、高齢者や障害者などへの配慮のほか、地震や火災などの非常時における緊急事態への対応、事業継続計画(BCP)を考慮します。
  2. 健康性:室内のCO2濃度や化学汚染物質を管理し、室内の空気清浄度のコントロールを行います。感染症対策や臭気に対する配慮も同様に重要です。
  3. 快適性:温度や湿度を適切に管理する温熱環境、自然光や照明による光環境、騒音の少ない音環境など、生活者の心地よさを追求します。自然の光や風を活用するパッシブシステムは環境配慮も同時にできます。
  4. 利便性:生活者の日常の利便性を高める取り組みです。適切な動線設計やスペースの設計のほか、エレベーター待ち時間を減らしたり、先進的なIT環境を導入したりすることも含まれます。
  5. 空間性:窓からの眺めや部屋の広さを工夫することにより、心地よい空間作りを目指します。そのほか、空間の配色や、コミュニティスペースの提供、緑の導入、アメニティの充実などがあります。
  6. 更新性:将来の変化やニーズに柔軟に対応できる設計です。部屋のレイアウトの変更や拡張が容易な設計、冗長性の確保、さまざまな動線の選択肢、収納スペースの確保などが考えられます。

これらの設計配慮項目を適切に取り入れることで、持続可能でありながらも生活者の心地よさや安全性、健康性を確保した建築が実現します。

設計指針(設計責任と説明責任)

サステナブル建築は、設計時点からライフサイクルを考慮した環境性能を考える必要があります。そのために問われる設計者としての責任と、事業者への説明内容について指針を示しています。

  1. 建物に対して

建物の全ライフサイクルにわたる一貫した方針を持ち、それを設計に反映します。また、ライフサイクルの建物性能に関して説明する責任があります。

  1. 事業に対して

環境投資において最大事業価値の実現をします。また、事業性をできるだけ数値や指標で示して説明する責任があります。

  1. 人に対して

居住者や利用者のために最適基準を目指します。また、人への優しさを数値や指標で示して説明をする責任を持ちます。

  1. 社会に対して

建築は私的なものと同時に社会的な価値も持ちます。その広義の社会性、例えば歴史性や文化性、景観性に対する設計責任を持ちます。

  1. 造り方に対して

建築を建てる時と建てた後の両方で環境とサステナビリティを考慮します。具体的には、施工実現度の高い環境設計に取り組むことや、建築のライフサイクル全体に対することを説明する責任があります。

サステナブル建築のメリット

サステナブル建築には以下のようなメリットがあります。

  • 環境に優しい
  • 省エネ効果が高い
  • 社会的な信頼性が上がる

環境に優しい

サステナブル建築は環境にやさしく、持続可能な環境を実現します。その理由は以下の5つがあげられます。

  • 高いエネルギー効率
  • 再生可能エネルギーの活用
  • CO2発生を抑制
  • 資源の有効活用
  • 生態系の保護

具体的には屋根や外壁の緑化、太陽光パネルの設置などの方法です。サステナブル建築は環境への影響を最小限に抑えることを核心とし、地球の未来を守っています。

省エネ効果が高い

サステナブル建築のメリットとして、省エネ効果の高さが挙げられます。サステナブル建築にはエネルギー効率を最大限に引き上げる設計が取り入れられているからです。具体的には、高品質な断熱材の使用や自然光の最大限の活用、再生可能エネルギーの導入、先進のエネルギー管理システム、そして緑の屋根や壁面緑化による断熱性の向上などがあげられます。さらに、エネルギー消費もリアルタイムで監視することで無駄なエネルギー使用を避けるマネジメントシステムも普及しています。これらの取り組みにより、サステナブル建築は長期的にエネルギーコストの削減にも寄与し、持続可能な社会の実現に貢献しているのです。

社会的な信頼性が上がる

サステナブル建築は、企業や組織の社会的な信頼性を高めるメリットがあります。その理由として、環境認証の取得や地域経済の支援を行うことで、認知や信頼を築きやすいからです。例えば、LEEDやBREEAMなどの国際的な環境認証を取得した建物は、その環境性能が第三者に評価されているという証として、多くの人々からの信頼を獲得します。また、地域の素材や技術を取り入れた建築プロジェクトは、地域の伝統や文化を尊重する姿勢を示し、地域住民との信頼関係を構築します。したがって、サステナブル建築はその多面的な取り組みを通じて、企業や組織の社会的な信頼性を向上させます。

サステナブル建築のデメリット

一方で、サステナブル建築には以下のようなデメリットも存在します。

  • 建築コストがかかる
  • メンテナンスの手間とコストがかかる

建築コストがかかる

サステナブル建築は、通常の建築よりもコストがかかります。その理由として、環境に配慮した高品質の素材やリサイクル可能な素材は、取得や加工にかかるコストが増えるからです。具体的には、高密度の断熱材、熱損失が少ない窓ガラス、再生可能エネルギーなどの最新の環境技術が考えられます。また、このような建築の設計や実現には専門家の知識や経験が必要とされ、設計費用や工事管理費用も増える可能性があります。長期的には運用コストの削減や建物の耐久性の向上による経済的なメリットも期待できますが、初期の投資は高くなることを念頭においておきましょう。

メンテナンスの手間とコストがかかる

建築費用だけでなく、サステナブル建築は維持管理にもコストがかかりやすい傾向にあります。その理由は、サステナブル建築には先進的な設備が導入されているため、定期的なメンテナンスや修繕が求められるためです。再生可能エネルギーやエネルギーマネジメントシステムとして、太陽光発電やHEMSを導入する例が多くあります。これらの仕組みは複雑で、周辺機器がたくさんあり、定期的なメンテナンスや修理、部品交換が必要なものもあります。しかし、建物の価値を維持し、長期的な経済的メリットや環境への貢献を実現するためのものであり、欠かせない要素です。初めからその視点で考慮しておき、維持管理の費用も必要経費として見越しておくことが重要です。

サステナブル建築とは?環境を守る建物の特徴を解説!【まとめ】

サステナブル建築は、環境負荷を最小限に抑えながら持続可能な社会の実現を目指す建築です。社会全体での取り組みが急務であり、地球環境を守っていくために、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの活用が必要になります。環境問題が深刻化する現代において、サステナブル建築は私たちの未来を守る重要なステップとなっています。

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