建築物環境計画書の制度は、環境に配慮した質の高い建築物の市場形成と、新しい環境技術の開発促進を目的としています。その背後には、建築物における環境配慮の全体像を明確にするとともに、環境に配慮した取組みが高く評価される市場を形成する意図があります。また、規制に頼るのではなく、建築主自らの自主的な環境配慮の取り組みを奨励することで、より効果的な環境対策を目指しています。2010年の制度強化では、再生可能エネルギー利用設備の導入検討が加えられ、これまでの導入事例が少なかったビルの排熱や河川熱の利用検討が期待されています。建築物環境計画書は、環境技術の開発と普及を促すとともに、建築主の自主的な環境対策の取り組みをサポートする重要な制度として位置づけられています。
東京は、世界有数の大都市でありながら、大気汚染やヒートアイランド現象、廃棄物の増加、緑地の減少などの環境問題が深刻化してきました。この問題に対応するため、東京都は平成12年に環境確保条例を制定し、建築物に対する環境配慮制度、すなわち「建築物環境計画書制度」を平成14年から施行しました。さらに、ヒートアイランド現象への対策を平成17年に追加しています。
その後、温暖化ガスが地球規模の気候危機の原因であることが明らかになると、東京都は2007年に「東京都気候変動対策方針」を策定します。この方針に基づき、建築物環境計画書制度を強化し、高い省エネルギー性能を持つ建築物が市場で評価され普及する方向を打ち出しました。そして、この強化された制度は2010年から施行されたのが、建築物環境計画書の制度です。
建築物環境計画書の提出義務や対象範囲は、建築物の延床面積によって異なります。
では、建築物環境計画書の内容はどのようなものなのでしょうか?おさえておくべきポイントは以下の通りです。
以下にて詳しく解説します。
建築物環境計画書は、建築主が自主的に環境配慮の設計内容を記載するもので、その内容は公表されます。この制度は従来の規制型の考え方から一歩進めて、以下の特色を持っています。
2010年の制度強化では、対象建築物の範囲の拡大、マンションの環境性能表示義務、再生可能エネルギー利用設備の導入検討義務、省エネルギー性能評価書制度の新設などが実施され、特定の大規模な建築物に対する省エネルギー性能基準の設定や性能目標値の確保も追加されています。
建築物環境計画書の評価項目は、建築物の環境への配慮を評価するための基準として設定されています。これらの項目は、持続可能な社会を実現するための重要な側面を網羅しており、4つの環境配慮項目とそれらの各区分は以下の通りです。
これらの項目は、建築物の環境への影響を総合的に考慮し、持続可能な都市環境の実現に向けた取り組みを促進するためのものとなっています。
建築物環境計画書の評価は、建築物の環境配慮に対する取組みの水準に応じて、3つの段階に分けられて評価されます。これにより、建築主や関係者がその建築物の環境への取組みの水準を一目で理解できます。
このような段階評価を通じて、建築物の環境への取組みの質や水準を明確にし、建築主や利用者に情報提供するとともに、より優れた環境配慮の取組みを促進していくことを目指しています。
東京都建築物環境計画書は、持続可能な社会に大きく寄与する取り組みです。その中でも特に大きな項目は以下の通りです。
以下にて詳しく解説します。
建築物のエネルギー効率の向上は、持続可能な社会の実現に欠かせない要素です。なぜなら、高いエネルギー効率を持つ建築物は、運用時のエネルギー消費を削減でき、温室効果ガスの排出が大幅に減少するからです。例として、最近のオフィスビルや住宅では、断熱性能の高い材料や最新のエネルギー管理システムを導入することで、冷暖房効率が大幅に向上します。これにより、一般的な建築物に比べて年間の電力消費量が大幅に削減できます。したがって、エネルギー効率の高い建築物の設計や導入は、環境保護と経済的節約の双方を達成する鍵となります。
再生可能エネルギーの導入は、環境の持続可能性とエネルギーの安定供給に対して極めて有効です。その理由は、再生可能エネルギーは太陽、風、地中熱などの自然のエネルギー源から得られるため、環境に持続的で、かつ温室効果ガスの排出が少ないからです。例えば、太陽光パネルを導入した建築物は、昼間の電力を太陽から得られ、これにより電気料金の削減やCO2排出の低減が実現します。また、風力発電や地熱発電などの技術も、化石燃料に頼らない持続可能なエネルギー供給を可能にしています。そのため、再生可能エネルギーの普及と効果的な利用は、私たちの未来のエネルギー問題を解決します。
建築物環境計画書の申請についての概要は以下の通りです。
建築物環境計画書に関連して、以下の必要書類を提出する必要があります。
これらの書類は、各段階ごとの提出が求められ、建築物の環境計画の進捗や状況を明確にするために用意されています。
(参考:東京都環境局 建築物環境計画書制度より)
建築物環境計画書の手続きの流れは以下の通りです。
※10,000㎡を超える特別大規模特定建築物は、省エネルギー性能評価書(設計)の交付を受ける
※マンションの場合は、マンション環境性能表示の広告掲載を行い、東京都へ提出する
※計画変更が生じた場合は、建築物環境計画書の変更を提出する
※10,000㎡を超える特別大規模特定建築物は、省エネルギー性能評価書(完了)の交付を受け、交付一覧を東京都へ提出する
東京都は、世界有数の大都市であり、経済、文化、技術、ファッションなど多岐にわたる分野でリーダーシップを担っています。しかし、その発展と共に環境の危機、特にヒートアイランド現象や大気汚染などの問題も増大しています。これに対応するために東京都建築物環境計画書が必要で、これは都市の持続可能性を向上させるための重要な取り組みの一つです。今後もこの制度のさらなる発展が期待されており、東京都は他の都市や国の模範となっていかなければいけません。東京都が取り組む建築物環境計画書は、地球規模での持続可能な都市開発になりえる意義深い事業です。