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2023
12
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設計一次エネルギー消費量を抑えて省エネ性能を上げる方法

設計一次エネルギー消費量を抑えて省エネ性能を上げる方法

省エネ性能の向上は現代建築の重要課題です。省エネを実現するためには、高効率の設備導入や建築物の外皮性能の最適化により、設計一次エネルギー消費量を抑える必要があります。この記事では、設計一次エネルギー消費量を抑える方法や計画のポイントについて詳しく解説します。

設計一次エネルギー消費量とは

設計一次エネルギー消費量は、建築物が消費する総エネルギー量を示す指標で、暖房、冷房、照明、換気、給湯などを全て含みます。自然から得られる一次エネルギー源は、直接的なエネルギー消費に換算され、建築物の総エネルギー性能を表します。この指標が低いほどエネルギー効率が高く、環境への影響も少ないです。

一次エネルギーと二次エネルギー

一次エネルギーは、自然から直接取得される原始的なエネルギー源です。これには石炭、原油、天然ガス、水力、太陽光などが含まれます。対照的に、二次エネルギーは一次エネルギーを加工・変換して得られるエネルギーで、電気やガソリンが代表例です。一次エネルギーはそのまま使用されることもあれば、より使いやすい形の二次エネルギーに変換されることもあります。建築物のエネルギー消費を評価する際には、これらのエネルギー源がどのように利用されているかが重要となります。

基準一次エネルギー消費量

基準一次エネルギー消費量は、建築物のエネルギー効率基準を定める際の重要な指標です。これは、建築物の種類、用途、地域などに応じて建築基準法や関連規則で設定された一次エネルギー消費の基準値を指します。建築計画では、この基準値を下回るような設計が求められ、省エネ性能の高い建築物設計への指針となります。具体的な基準値は、建築物の使用目的や規模、地域の気候条件などに基づき決定され、建築物のエネルギー効率を向上させるための最低限の要求水準として機能します。

省エネ基準適合義務化と省エネ計算について

省エネ基準適合義務化は、建築物が一定の省エネルギー基準を満たすことを法的に義務付ける制度です。この基準は、建築物のエネルギー効率を高め、環境負荷を軽減することを目的としています。省エネ計算とは、建築物の設計段階で行われる一次エネルギー消費量の予測計算のことで、建築物の断熱性能や設備のエネルギー効率を考慮して行います。この計算により、建築物が省エネ基準を満たしているかどうかを評価し、必要に応じて設計の見直しを行うことができます。省エネ基準の適合は、エネルギー効率の良い建築物の設計を促進し、長期的な環境保護に貢献します。

一次エネルギー消費量を抑える方法 

一次エネルギー消費量を抑えるためには、建築物の設計と運用の両方で効率的なアプローチが必要です。設計段階では、断熱性能を高めることが重要で、これには高品質の断熱材の使用や、窓の二重化、遮熱塗料の利用などが含まれます。また、建築物の方位を考慮した設計により、自然の光と熱を最大限に利用することも重要です。

運用面では、エネルギー効率の高い家電や照明の選択、適切な温度設定の保持、そして定期的な設備メンテナンスが重要です。特に、暖房・冷房システムは定期的なチェックやフィルターの適切な清掃や交換により、エネルギー効率を大幅に向上させることができます。

建築物利用者の行動も大きく影響します。例えば、不要な照明や電気機器の消し忘れを避ける、断熱カーテンの利用、日常的なエネルギー使用に対する意識を高めるなど、小さな行動の積み重ねが一次エネルギー消費量の削減に繋がります。これらの方法を組み合わせることで、効果的に一次エネルギー消費量を抑制し、省エネルギーの実現が可能になります。

住宅が使うエネルギーはほぼ暖房と給湯

住宅のエネルギー消費において、暖房と給湯は主要な部分を占めます。これは、家庭内での快適な生活環境を維持するために、特に冬季に暖房が頻繁に使用され、給湯も一年中必要とされるためです。暖房のエネルギー効率は、建築物の断熱性能や使用する暖房システムによって大きく異なり、給湯では給湯器の効率や配管の断熱が重要です。したがって、住宅のエネルギー効率を高めるには、暖房と給湯システムの効率化が重要で、これによって住宅全体のエネルギー消費量を減らすことができます。

暖房の効率を上げるために

暖房の効率を上げるためには、まず断熱性能の向上が重要です。断熱性能が高い住宅は、外部からの冷気の侵入を防ぎ、内部の温かい空気を逃がしにくくします。次に、効率的な暖房システムの選択が必要です。例えば、高効率のエアコンや地熱暖房は、従来の暖房方法に比べてエネルギー消費を大幅に削減できます。また、窓の二重化や気密性の向上も効果的です。これにより、暖房に必要なエネルギーを低減し、結果的に住宅の一次エネルギー消費量を減らすことが可能になります。これらの工夫を施すことで、暖房の効率は大きく向上します。

給湯の効率を上げるために

給湯の効率を上げるためには、高効率な給湯器の選択が最も重要です。エコジョーズやヒートポンプ式給湯器のような省エネ型機器は、従来の給湯器に比べてエネルギー消費を大幅に削減できます。次に、給湯配管の断熱も効果的です。配管を適切に断熱することで、熱損失を減らし、エネルギー効率を高めることができます。また、使用する水量を意識し、必要以上のお湯を使わないようにすることも大切です。これらの対策を通じて、給湯に必要なエネルギー消費を減らし、全体の一次エネルギー消費量の削減に寄与します。効率的な給湯システムの導入と運用は、給湯のエネルギー効率を大きく向上させます。

一次エネルギー消費量のポイント

一次エネルギー消費量を抑えるポイントは2つあります。

⦁ 省エネ設備を導入する

⦁ 外皮性能を上げる

これらは建築物の全体的なエネルギー効率が向上します。以下にて詳しく解説します。

省エネ設備の導入

省エネ設備の導入は一次エネルギー消費量を削減する鍵です。省エネ設備を導入することで、建築物のエネルギー効率は大幅に向上します。例えば、高効率の暖房・冷房システム、LED照明、省エネ型給湯器などは、従来の設備よりもかなり少ないエネルギーで同等またはそれ以上の性能を発揮します。また、エネルギー管理システム(BEMS)の導入により、建築物全体のエネルギー使用を効果的に管理し、無駄な消費を減らすことができます。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギー源の利用は、エネルギーの自給自足を実現し、長期的な環境保護に貢献します。これらの対策により、建築物の一次エネルギー消費量は効果的に削減され、持続可能な建築への道が開かれます。

外皮性能

外皮性能の向上は、建築物の一次エネルギー消費量を削減する上で中心的な役割を果たします。外皮の断熱性能が上がると、建築物内部の熱損失が大幅に減少します。これにより、暖房時の熱が室内に留まりやすくなり、また夏季の冷房時には外部の熱が室内に入りにくくなります。結果として、暖房や冷房に必要なエネルギー消費が減少し、エネルギー効率が向上します。さらに、温度変動が少なくなるため、室内の快適性が高まります。窓の二重化や気密性の高い建材の使用も、外皮性能を向上させるために重要です。これらの施策により、エネルギー効率の良い持続可能な建築物の実現に寄与し、長期的なエネルギーコストの削減にも繋がります。

BEIについて

建築物の一次エネルギー消費量を表す指標としてBEI(Building Energy Index)が広く知られています。BEIは、設計された建築物の一次エネルギー消費量を、標準的な建築物と比較した割合を可視化します。BEIが1以下の場合、その建築物は標準的な建築物よりもエネルギーを少なく消費していることを表します。設計段階でこの指標を用いることで、エネルギー効率の良い建築設計を目指すことができるのです。また、BEIは様々な制度に用いられています。

ZEH

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、年間で消費する一次エネルギー量を、その建築物が生成するエネルギー量で相殺することを目指す住宅の設計コンセプトです。ZEHの実現には、まず高い断熱性能や省エネ設備の導入が必要で、これにより必要なエネルギー消費を大幅に削減します。ZEHはBEIが0.8以下であることが条件となっており、エネルギー効率の良い持続可能な住宅設計を目標としています。

BELS

BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物のエネルギー効率を評価し、それをラベルとして表示する制度です。このシステムは、建築物のエネルギー性能を客観的に評価し、消費者や利用者にその情報を提供することを目的としています。BELSの評価には、BEIが用いられ、これに基づいて5段階の評価が行われます。

  • ☆☆☆☆☆(5つ星): BEIが0.80以下
  • ☆☆☆☆(4つ星): BEIが0.80より大きく、0.85以下
  • ☆☆☆(3つ星): BEIが0.85より大きく、0.90以下
  • ☆☆(2つ星): BEIが0.90より大きく、1.00以下
  • ☆(1つ星): BEIが1.00より大きく、1.10以下(既存建築物のみ)

※住宅用途の場合

トップランナー制度

トップランナー制度は、製品や設備の省エネ性能を向上させるための政策です。この制度では、市場に存在する最も効率的な製品や設備を「トップランナー」として設定し、その性能を基準に新たな省エネ基準を定めます。2024年度の建築物に対する新たなBEIの基準値は、注文戸建住宅のBEI基準値は0.75以下、賃貸住宅は0.90以下、建売戸建住宅は0.85以下とされています。トップランナー制度は、最先端の省エネ基準を設定することで技術革新を促進し、エネルギー効率の向上と環境保護への大きな貢献を目指す重要な取り組みです。

設計一次エネルギー消費量を抑えて省エネ性能を上げる方法【まとめ】

本記事では、設計一次エネルギー消費量について詳しく解説しました。省エネ設備の導入や建築物の外皮性能の向上は、一次エネルギー消費量の削減に大きく寄与します。また、ZEHやBELS、トップランナー制度などは、持続可能な建築環境を実現するためのガイドラインとして機能し、省エネルギー性能の高い建築物の設計を促進します。設計一次エネルギー消費量は、建築物のエネルギー効率を総合的に評価し、省エネルギーと環境保護の観点から持続可能な建築を実現するための重要な指標です。

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