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省エネ計算お役立ちコラム
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2023
6
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外皮計算とは?住宅の省エネ性能を表す新しい計算方法を解説

外皮計算とは


外皮計算は、建築物の断熱性能を評価するための手法です。外皮とは室内と室外の境界面であり、屋根、外壁、床、天井、窓、ドアなど熱の影響を受けやすい部分を指します。この外皮からどれだけ熱が流出・流入するかを算出し、結果をもとに住宅の断熱性能を評価します。この評価結果は、断熱改善策の考案や省エネ性の高い住宅設計への指針となります。

外皮基準は住宅のみ

省エネ性能評価における外皮基準の適用は住宅に限られています。一方、非住宅建築物では一次エネルギー消費量基準が適用されます。この基準は、建築物全体のエネルギー消費量を評価するためのもので、その計算の中で間接的に外皮性能が考慮されます。したがって、建築物の種類によって評価方法が異なり、それぞれがエネルギー効率の向上に寄与しています。

従来の計算方法との違い

従来の外皮性能評価は、熱損失係数Q値を用いていましたが、それには問題点がありました。Q値は熱損失を床面積で割って求めるため、床面積により結果にばらつきがあり、これは正確な断熱性能を評価するには不十分でした。そこで、床以外も含めた外皮全体の面積あたりの熱損失を求める外皮計算が導入されました。こうして求められる外皮あたりの熱損失量をUA値といいます。UA値は床面積によるばらつきが少なく、より正確な断熱性能の評価が可能です。

省エネ性能を正確に証明できる

外皮計算を用いることで、省エネ性能をより正確に証明できます。熱損失を床面積ではなく、外皮全体の面積で評価することにより、個々の建築物の特性を捉えられます。たとえば、窓や外壁の材質、窓の大きさや位置など、これまで評価しきれなかった要素もしっかりと評価できます。これにより、具体的な改善策の提案や省エネ設計の精度向上につながり、エネルギー消費の削減に大いに寄与します。

省エネ性能が高い建築物のメリット


省エネ性能が高い建築物には以下のようなメリットがあります。

・光熱費を減らせる
・快適で健康になる
・環境にやさしい

光熱費を減らせる

省エネ性能が高い建築物では、光熱費の大幅な節約ができます。良好な断熱性能は、冷暖房のエネルギー消費を大きく削減します。具体的に、冬季には外部からの冷気の侵入を抑制し、室内の暖房熱を逃がしません。また、適切な日射熱取得設計により、冬季の暖房効率が向上します。夏季には、高断熱サッシや庇の計画で日射熱の取得を抑制し、冷房の効率を向上させます。これらにより、一年を通じてエネルギー消費量を低く抑えられて、光熱費の節約になります。さらに、設備の運転時間の減少は設備寿命を延ばし、設備の更新や修繕コストも抑える効果があります。

快適で健康になる

省エネ性能が高い建築物は、単に光熱費を節約するだけでなく、住む人にとっても快適で健康的な生活を実現します。優れた断熱性能により室内の温度差が小さくなるため、冷暖房が必要な季節でも体が感じる温度の変化が少なくなります。これは、体の冷えや温まりすぎによる身体への負担やストレスを減らす効果があります。室内の温度を適切に保つことで長時間過ごす居住空間がより快適になり、生活の質を大きく向上させることができます。

環境にやさしい

省エネ性能が高い建築物は環境にも配慮できます。建物のエネルギー消費を抑制することで、二酸化炭素の排出量が削減され、これは地球温暖化の防止に直結します。さらに、再生可能エネルギーを導入することで、より環境負荷を減らせます。具体的には、太陽光発電システムや地熱ヒートポンプなどを組み込み、エネルギー供給の持続可能性を確保しつつ、建物全体のエネルギー効率が高められます。これらの措置は、生物多様性の保全や自然環境の維持にも寄与します。短期的なコスト効果だけでなく、長期的な環境負荷の観点からも、省エネ性能の高い建築物は大きな価値を持ちます。

住宅の外皮性能について


住宅の外皮性能はエネルギー消費量を削減するために重要な指標となります。特にUA値、ηAC値、BEIの3つの値は、住宅の外皮性能を評価するための基本的な数値となります。これらを理解して設計や改修に生かすことで、高い省エネ性能を持つ住宅を作ることができます。

UA値:外皮平均熱貫流率

UA値は、建物の断熱性能を示す指標であり、低いほど優れた断熱性能を示します。具体的には、外皮を通じてどれだけの熱が流出または流入するかを表します。これにより、冷暖房負荷を抑えることが可能で、エネルギー消費の削減につながります。UA値を下げるには、断熱材の選定や窓の種類、設置位置などを工夫する必要があります。

ηAC値:冷房期の平均日射熱取得率

ηAC値は、冷房期における建物の日射熱取得性能を示す指標で、低いほど優れた性能を示します。窓ガラスの種類や日射調整の手法、遮熱性能などが影響を与え、適切に設計することで夏場の冷房負荷を抑えられます。これはエネルギー消費量を削減するだけでなく、室内の温度環境を快適に保つためにも重要な指標です。

BEI:一次エネルギー消費量の削減率

BEIは、基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合を示す指標で、小さいほど省エネ性能が高いことを表します。設計時点での省エネ対策の成果が数値化され、その具体的な効果が見える化されます。例えば、高性能な断熱材の使用や、適切な空調設備の選定によりエネルギー利用の効率化が図られ、結果的にBEIの数値は下がります。それが、実際の光熱費の節約やCO2排出量の削減につながります。このように、BEIは省エネルギー性能を評価するための重要な数値であり、エネルギー消費量を具体的に把握する際の参考となります。

改正建築物省エネ法について


外皮計算をはじめとする省エネ推進事業の中でも、改正建築物省エネ法も非常に大きな取り組みです。2020年に施行された改正建築物省エネ法は、日本のエネルギー消費の大部分を占める建築物に対する省エネ性能の向上を求める法律です。従来の省エネ法では、外皮性能に重点を置きましたが、新しい法律ではさらに、その評価指標や対象範囲が大きく拡大されました。この法律は、エネルギー効率の高い建物の設計、建設、そして運用を推進し、低炭素社会への転換を目指します。

この法律の主な変更点は二つあります。一つ目は、エネルギー消費性能の説明が建築主に対して義務化されたこと。これにより、建築主は、自身の建物の省エネ性能について詳しく理解し、より効率的な選択が可能になります。二つ目は、省エネ基準の適用範囲が明確化されたことです。これにより、各建築物の特性に合わせた適切な省エネ対策が求められるようになりました。この改正法の導入により、エネルギー効率の高い社会実現に大きな一歩を踏み出すこととなります。

省エネ性能の説明が義務化

2020年に施行された改正建築物省エネ法では、建築主に対するエネルギー消費性能の説明が義務化されました。建物の計画段階から、建築主にエネルギー消費性能を理解してもらうことで、エネルギー効率の高い住宅選択を促進します。具体的には、UA値やηA値といった外皮性能指標、そして一次エネルギー消費量などを用いて、省エネ性能を評価する指標とその意義を明確に伝える必要があります。これにより、エネルギー効率の高い設計や設備の導入が進み、省エネ性能が向上することが期待されます。

建築物ごとに省エネ基準への適用が明確に

改正建築物省エネ法では、省エネ基準の適用範囲も明確化されました。従来の基準は、住宅と非住宅に分けられていましたが、新基準では、その中でも具体的な建築物の形態や用途により、適用する基準が異なります。例えば、一般的な住宅では外皮性能を重視した基準が適用されますが、商業施設などの大型建築物では、空調設備や照明設備に関わる基準が主に適用されます。これにより、各建築物の特性に応じた適切な省エネ対策が求められ、より実効性のある省エネ法となります。

まとめ

建築物の省エネ性能の高さを証明するためには、外皮性能による適切な計算が必要です。外皮計算で高い省エネ性能が確かめられた住宅は、高い断熱効果をもたらし、快適な室内環境を提供し、光熱費を節約し、地球環境に配慮することができます。

外皮計算を適用した高い省エネ性能をもつ住宅をつくり、持続可能な社会を実現しましょう。

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