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2023
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省エネ適合性判定とは?建築物のエネルギー効率を表した基準

省エネ適合性判定とは?

省エネ適合性判定とは、建築物のエネルギー消費性能の向上を目的とした法律(建築物省エネ法)に基づき、特定の建築物が省エネ基準に適合しているか、判定を義務づけたものです。対象となる特定の建築物は、適合性判定を行わないと工事の着工ができません。適合性判定が完了しないと、確認済証や検査済基準に基づき評価がなされます。適合しない場合、建築主は必要な改善を行う必要があります。判定については所管行政庁や登録された判定機関が行い、厳格な基準に基づき評価がなされます。

建築物省エネ法について

建築物省エネ法は、2015年7月に制定された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」として知られています。この法律は建築物のエネルギー消費性能を高め、エネルギーを効率よく使うことを目指しています。省エネ適合性判定は建築物省エネ法で定められており、その基準を確認するために実施されます。特に、日本の2050年のカーボンニュートラル目標や2030年度の温室効果ガス削減目標を達成するために、建築物分野でのエネルギー消費の削減が強調されています。建築物省エネ法では、この目的を達成するために様々な取り組みが推奨され、木材の使用を促進する方針なども含まれています。

登録省エネ判定機関について

登録省エネ判定機関とは、適合性判定を担当する民間機関です。国土交通大臣や地方整備局長等からの登録を受ける必要があるため、誰でも評価ができるわけではありません。そのため、この機関が行う適合性判定は信頼性が高く、正確な評価が求められます。

適合義務の対象となる建築物

省エネ適合性判定の適合義務の対象となる建築物は以下の通りです。

  • 新築の場合:非住宅部分の床面積が300㎡以上の建築物。
  • 増改築の場合:非住宅部分について、増改築する部分の床面積が300㎡以上で、増改築後における非住宅部分の床面積合計も300㎡以上となる建築物。

なお、2017年4月1日時点ですでに建っていた建築物を増改築する場合、非住宅部分における増改築部分の床面積の合計が、増改築後の非住宅部分における延べ面積の半分以下となる場合、適合義務の対象とはならず、届出が必要となります。

適合義務の基準について

省エネ適合性判定は、一次エネルギー消費量の基準を基にしています。一次エネルギー消費量とは、住宅の設備機器が消費するエネルギーを熱量に変換したもので、空調、機械換気、照明、給湯、昇降機のエネルギー消費が合算されて算出されます。評価の際には、建築物の設計時の一次エネルギー消費量が標準設計仕様の消費量を下回ることが求められます。さらに、一次エネルギー消費量の計算には外皮性能も考慮されるため、建物の断熱性や遮熱性も評価に間接的に影響を与えます。

一次エネルギー消費量の削減率をあげる方法

一次エネルギー消費量の削減率をあげるには以下のような方法があります。

  • 外皮の性能を上げる
  • 高効率の設備を使用する
  • 再生可能エネルギーを導入する

外皮の性能を上げる

外皮の性能を上げることで、一次エネルギー消費量の削減率を高められます。その理由は、建築物の外皮性能が上がることで外部の熱が室内に伝わりにくくなり、冷暖房の稼働時間を短くできるからです。外皮の性能を上げるということは、断熱性能を上げると言い換えられます。具体的な方法は以下の通りです。

  • 躯体内に充填する断熱材のグレードを上げる
  • サッシの断熱性を上げる
  • 屋根や外壁に熱反射塗料を利用して太陽熱を反射する
  • 壁面や屋上を緑化して太陽からの直射熱を軽減する

外皮の性能を高めることは、エネルギー効率の向上とともに快適な室内環境の実現にも寄与します。初期費用はかかりますが、長期的に見て経済的な節約効果や持続可能な環境づくりが期待できます。

高効率の設備を使用する

高効率の設備を利用すると一次エネルギー消費量の削減率を改善できます。高効率の設備は、同じ作業や機能を低効率の設備よりも少ないエネルギーで実行できるからです。特に空調や給湯はエネルギー消費に差が生まれやすいため、高効率設備を使用することで大きな効果が期待できます。また、長時間使用する箇所の照明や機械換気設備を改善することで日常のエネルギー使用量が大きく減少します。エネルギー消費を減らすことでCO2排出量の削減にも繋がり、環境への貢献にもなります。

再生可能エネルギーを導入する

再生可能エネルギーを導入すると、一次エネルギー消費量の削減が期待できます。これは、再生可能エネルギーが化石燃料とは異なり、環境に優しい持続可能なエネルギー源だからです。太陽光発電、風力発電、地熱発電など、多岐にわたる再生可能エネルギーの技術が利用されています。特に、太陽光発電と組み合わせてHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を利用すると、エネルギーの効率的な制御や管理が可能となり、余剰電力の蓄電や需要に応じたエネルギー利用を実現できます。従って、再生可能エネルギーの導入は、環境への負荷軽減とコスト削減の双方でメリットがあると考えられます。

省エネ適合性判定の手続きの流れ

省エネ適合性判定と建築上の手続き関係について解説します。確認申請と完了検査について、関係を把握しておきましょう。

確認申請との関係

省エネ適合性判定の対象となる建築物は、適合性判定を受けなければ確認済証を受け取れません。以下が具体的な申請の流れとなります。

  1. 建築主は建築確認申請を指定確認検査機関や所管行政庁に行います。
  2. 申請完了後、同じ機関に省エネ適合性判定の資料を提出し、審査を依頼します。
  3. 審査結果が良好であれば、建築主に省エネ適合判定通知書が交付されます。
  4. この通知書を持って、建築主は確認済証の発行を指定確認検査機関に依頼します。
  5. 最終的に、全ての手続きが正しく完了した場合、確認済証が建築主に交付されます。

この一連の手続きは、建築物が省エネ基準に適合していることを保証するもので、確認申請図の審査時間と重なるため、省エネ適合判定通知書の交付が確認申請の審査中に行われるのが一般的です。

完了検査との関係

建築物省エネ法に適合する建築物は、完了検査時に省エネ計算時に計上した設備や計上されるべき設備についての検査が必要となります。検査は目視や計測等の立会い確認、また施工計画書や試験成績書に基づく確認方法があります。

特に注意が必要なのは、完了検査での不適合の指摘です。例えば、外皮計算でブラインドの設置が計上されているのに現地に設置されていない場合や、計算書に計上されていない給湯設備が存在する場合などです。これらの不一致が確認された場合は、再度の軽微変更該当証明申請を行い、その後で完了検査を再受検する必要があります。

省エネ適合性判定の計算方法

省エネ適合性判定は、建築物のエネルギー効率を評価するためにBEIという指標を用います。BEIは「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割った値で、計算式は以下の通りです。

BEI=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量

BEIの値が少ないほどエネルギー消費量が基準値を下回っていることを指し、省エネ性能が優れていることを意味します。以下の基準を満たすことで、省エネ適合と認定されます。

BEIの基準

  • 新築や既存建築物の増改築の場合:BEI ≦ 1.0
  • 平成28年4月に現存する既存建築物の場合:BEI ≦ 1.1

省エネ適合性判定とは?住宅のエネルギー効率を表した基準を解説【まとめ】

省エネ適合性判定は、住宅のエネルギー効率を測定・評価するための重要な基準となっています。これを理解し活用することで、持続可能で経済的にも効率的な住宅設計が可能となります。本記事を通して、省エネルギーの重要性とその基準の役割を学び、今後の住宅選びや設計に役立てましょう。

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