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2023
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一次エネルギー消費量等級とは?省エネ住宅に必要な断熱性能

一次エネルギー消費量等級とは?省エネ住宅に必要な断熱性能と基準を解説

省エネが叫ばれている現代において、一次エネルギー消費量という言葉を耳にすることが多くなりました。一次エネルギー消費量とは住宅のエネルギー効率を評価するための指標で、それを等級という形でわかりやすく表したのが一次エネルギー消費量等級です。本記事では、一次エネルギー消費量等級を理解し、省エネ住宅を目指す際の断熱性能とその基準について詳しく解説します。

一次エネルギー消費量等級とは?

一次エネルギー消費量等級は、住宅の年間エネルギー消費を評価する指標です。この基準は2013年に導入され、BEI(Building Energy Index)という数値で等級が決まります。BEIは「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割った値で、エネルギー削減率を示します。

一次エネルギー消費量等級とBEI

  • 等級6:BEI 0.8以下
  • 等級5:BEI 0.9以下
  • 等級4:BEI 1.0以下
  • 等級3:BEI 1.1以下

(参考:国土交通省 住宅性能表示制度の省エネ上位等級の創設

BEIが低いほど省エネ性が高くなり、一次エネルギー消費量等級は上がります。国の省エネ基準では等級4以上が推奨されており、この等級が住宅の設計や選定、さらには省エネ補助金の対象となるかどうかを判断する際の重要な指標となっています。

断熱等性能等級との違い

一次エネルギー消費量等級と断熱等性能等級は、いずれも住宅の省エネ性能を評価する基準です。一次エネルギー消費量等級は住宅全体のエネルギー効率を測るため、暖房から冷房、給湯まで全てのエネルギー消費を一次エネルギーで計算します。総合的なエネルギー効率の向上を目的とするため、実際に使用するエネルギー量を表します。一方で、断熱等性能等級は住宅の外皮、つまり壁や天井、床などの熱性能に注目しています。この基準では、外皮平均熱貫流率や冷房期の日射熱取得率、さらには結露防止基準も考慮され、熱損失や熱取得を最小限に抑えることが目的です。快適性や省エネ効果のためにはどちらも欠かせない要素で、これらの高評価を目指すことで持続可能な住まいが手に入ります。

住宅性能表示制度について

一次エネルギー消費量等級や断熱等性能等級は住宅性能表示制度に基づいて基準が定められています。住宅性能表示制度は平成12年(2000年)に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいています。この制度は住宅の品質を確保し、消費者による選択を補助する目的があります。断熱や消費エネルギーに関する分野を含め、10分野34事項にわたる性能表示が定められ、構造安定性から防犯に至るまで多角的な評価を可能にしています。

性能表示は、国土交通大臣によって登録された第三者機関によって客観的に評価されるのも大きなメリットです。この評価結果は住宅性能評価書に記載され、原則として契約内容にもなります。これによって、表示された性能が実際の住宅に反映されるため、信頼性も高いのが特徴です。

省エネ基準について

一次エネルギー消費量等級が注目されている背景として、省エネ基準の改正も大きく影響しています。2021年4月施行の「改正建築物省エネ法」から、300㎡未満の住宅は「断熱性能」と「設備性能」の2つの要素で省エネ性能が測定されるようになりました。具体的な評価指標は、外皮平均熱貫流率(UA値)、日射熱取得率(ηA値)、一次エネルギー消費量削減率の3項目です。日本は8つの気候地域に分けられ、各地域で基準値が設定されています。2025年からは省エネ基準の適合が義務化される計画で、現在は「努力義務」とされています。適合しない場合、住宅は建設できなくなる見込みです。

省エネ基準は1980年に初めて制定されましたが、以降数回にわたって改正・強化されています。今回の改正が建築業界に与えた影響は大きく、「ZEH」や「HEAT20」、「長期優良住宅」などの関連基準も存在します。それだけ環境問題に寄与する建築物の省エネ化の必要性は大きく、解決しなければいけない課題とされています。

ZEH基準を上回る新しい等級

ZEHは2008年頃から米国で考えられた省エネの発想です。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスという名の通り、省エネ住宅をつくり、消費量を抑えたエネルギーは再生可能エネルギーで補う住宅を指します。日本でも2014年から数年にわたってZEH基準が省エネ住宅の目指す姿とされてきましたが、2025年度の省エネ基準適合義務化に伴って住宅性能表示制度はさらに進化しています。2022年4月から、住宅性能表示制度でも、ZEH基準である断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6が設定され、同年10月にはそれを超える断熱等性能等級6・7が施行されました。この新しい等級設定により、業界全体の省エネ取り組みが加速すると期待されています。

目指すのはカーボンニュートラル

省エネ基準の目的は2050年までにカーボンニュートラルを実現することです。この目標に向けて、住宅や建築物のエネルギー効率と再生可能エネルギーの利用が重要な要素となっています。具体的には、2030年までに新築される住宅や建築物は、ZEHやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の基準を満たす省エネ性能が確保される計画です。さらに、新築の戸建て住宅の約6割には太陽光発電設備が導入される予定となっています。

2050年には、既存の住宅や建築物も含めて、ストック平均でZEH・ZEB基準の省エネ性能が確保されます。このような省エネ基準は、2025年度には既に全ての住宅と建築物に適用されることが義務化される予定です。そして、2030年までには、この基準をさらにZEH・ZEB基準に引き上げるのが日本政府の方針です。このように、住宅と建築物はカーボンニュートラルの目標達成において、中心的な役割を果たすことが期待されています。

一次エネルギー消費量等級を上げる方法

一次エネルギー消費量等級を上げるには以下のような方法が効果的です。

  • 省エネエアコン
  • 高効率給湯器
  • LED照明+調光やセンサー
  • 熱交換換気
  • 節水型設備

以下にて詳しく解説します。

省エネエアコン

省エネエアコンの導入はエネルギー効率の向上に寄与します。空調は住宅で使用されるエネルギーの大部分を占めるからです。経済産業省の調べによると、家庭でのエアコンの電力消費が夏場で34.2%、冬場で32.7%と高く、1日の電気代の約3割以上がエアコンに依存しています。初期費用はかかるものの、エネルギー効率が高いエアコンを用いることで、エネルギーの有効活用が可能となり、一次エネルギー消費量等級を上げられます。

高効率給湯器

一次エネルギー消費量等級を上げるには、高効率給湯器が有効です。給湯器は、エアコン、冷蔵庫に次いで、家庭でのエネルギー消費に大きく影響する機器の一つだからです。経済産業省の調べによると、家庭での給湯器の電力消費が夏場で6.1%と低いものの、冬場は12.5%と大きな割合を示しています。また、国は高効率給湯器の導入を促進すべく、家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金制度を設けています。2030年度のエネルギー需給見通しの達成には、高効率給湯器の普及が不可欠であることは間違いありません。高効率給湯器を使用することで、エネルギーの効率的な利用が進み、一次エネルギー消費量等級の向上が期待できます。

LED照明+調光やセンサー

一次エネルギー消費量等級を向上させるには、LED照明に調光機能やセンサーを追加する方法も効果的です。LED照明自体が既に省エネ性に優れていますが、調光やセンサーを組み合わせることで、さらなるエネルギー削減が可能になるからです。一般社団法人日本電設工業協会技術・安全委員会によると、白熱灯は年間1,300,000万kWhを消費し、507万tのCO2を排出しているそうです。これをLEDに置き換えると、430万t-CO2が削減可能で、340万tのCO2の削減目標を達成します。それほど、地球温暖化防止にLEDが大きく寄与しています。省エネ効果の高い照明環境の構築は、一次エネルギー消費量等級の向上に欠かせません。

熱交換換気

一次エネルギー消費量等級を上げるために熱交換換気が有用です。熱交換換気は、排出する空気の熱を有効的に利用する仕組みであり、換気によって失われる温熱のロスを解消できるからです。特に寒冷地で室内と室外の温度差が激しい地域はメリットが出やすい傾向にあります。換気による温熱のロスを減らす熱交換換気は、一次エネルギー消費量等級の向上に寄与します。

節水型設備

一次エネルギー消費量等級を高めるためには、節水型設備の導入も効果的です。節水を実現する設備を用いることで、普段何気なく使用する水量を削減できるからです。エネルギー消費を抑制できます。具体的には、節水型トイレやセンサー水栓、小流量シャワーヘッドなどが有効です。これらを使用するだけでエネルギー効率が高まり、一次エネルギー消費量等級の向上が期待できます。

断熱性能を高める方法

一次エネルギー消費量を削減するためには断熱性能を上げることも重要です。断熱性能が高ければ熱損失が小さくなり、空調の負荷を抑えられます。断熱性能を上げるためには、「高断熱サッシ」と「高性能断熱材」の使用が有効です。

高断熱サッシ

断熱性能を高めるには高断熱サッシが非常に有効です。窓は住宅の熱の出入り口になるからです。たとえばアルミサッシでは、夏には窓からの熱の導入が全体の約7割、冬には熱が窓から逃げる割合が約5割にも達します。この熱の逃げを解消するには樹脂サッシや、複層ガラス・トリプルガラスなどの高断熱サッシが有効で、これらの商品は熱のロスを約7割ほど抑える効果があります。2030年度のエネルギー需給の見通しに対応するためには、高断熱サッシの導入はほぼ必須と言えるでしょう。

高性能断熱材

断熱性能を高めるためには、高性能断熱材の使用が効果的です。断熱性能を上げることで熱のロスが小さくなり、建物全体の空調効率を大幅に向上させる効果があるからです。具体的には、古紙やリサイクル原料からつくられたセルロースファイバーや現場で発砲させて吹き付けるウレタンフォームなどは断熱効果が高い材料として知られています。また、一般的な断熱材であるグラスウールでも、密度の高い高性能な商品もあります。断熱性能が高まることで室内温度が均一になり、身体への負担も小さくなります。高性能断熱材は長期的に考えれば、その初期コスト以上のリターンが期待できる投資となります。

一次エネルギー消費量等級とは?省エネ住宅に必要な断熱性能と基準を解説【まとめ】

一次エネルギー消費量等級の概要と、等級向上のための具体的な方法を解説しました。この等級は住宅のエネルギー効率を評価する基準であり、省エネ住宅を目指す上で不可欠です。短期的なコストはかかりますが、長期的には光熱費削減や補助金、快適な室内環境の実現などでリターンが期待できます。省エネと快適な住まいを両立させるために、一次エネルギー消費量等級と断熱性能に関する基準をしっかりと理解し、省エネ住宅を計画しましょう。

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