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2023
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ZEB認証の手続きとは?メリットやデメリットも解説

ZEB認証の手続きとは?メリットやデメリットも解説

現代の建築業界では、環境に配慮した建築物の需要が高まっています。その中心となるのが「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」ですが、ZEB認証についてまだまだ理解が浸透していないのも事実です。この記事では、ZEB認証の手続きの流れや、そのメリット・デメリットについて、わかりやすく解説します。

ZEBとは

 

ZEBは、建築物の年間一次エネルギー収支ゼロを目指す建築概念です。ビルの中で人が活動するためには、空調、照明、換気などのエネルギーが必要です。そのため、完全にエネルギー消費をゼロにすることは不可能といえます。しかし、省エネで消費量を減らし、創エネで必要エネルギーを生成することで消費エネルギーを少なくできます。こうして、実質的なネットエネルギー消費ゼロを目指した建築物がZEBです。

ZEBの種類

ZEBには以下の4種類があり、それぞれ異なる基準があります。

  • ZEB

定義:年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物。

条件:基準一次エネルギー消費量を50%以上削減(再生可能エネルギー除く)、および100%以上削減(再生可能エネルギー含む)。

  • Nearly ZEB

定義:ZEBに限りなく近い建築物。ZEB Readyの要件を満たし、さらに再生可能エネルギーで年間一次エネルギー消費量をゼロに近づける。

条件:基準一次エネルギー消費量を50%以上削減(再生可能エネルギー除く)、及び75%以上100%未満削減(再生可能エネルギー含む)。

  • ZEB Ready

定義:ZEBを見据えた先進的な建築物。外皮の高断熱化や高効率省エネ設備を装備。

条件:再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上削減。

  • ZEB Oriented

定義:ZEB Readyを見据えた建築物。外皮の高性能化、高効率省エネ設備、さらなる省エネ措置を講じる。

条件:用途により、再生可能エネルギー除き、基準一次エネルギー消費量から40%以上(事務所等)または30%以上(ホテル等)削減。未評価技術の導入も要求。

ZEB認証の手続き

ZEB化を進めるためには、その性能を適切に評価し、認証・表示する必要があります。建築物の評価・認証・表示を行う制度には、いくつかの種類があります。

⦁ エネルギー性能に特化したもの:BELSやENERGY STAR

⦁ エネルギー性能に限らず総合的な環境性能を評価するもの:CASBEEやLEED

⦁ 快適性や健康性を重視する制度:WELLやCASBEE-ウェルネスオフィス

こちらでは最も一般的な評価制度であるBELSについて詳しく解説します。

BELS

BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)は、建築物の省エネ性能を表示する制度の一つです。この制度により、事業者は建築物省エネ法に基づき、建築物の省エネ性能を表示できます。BELSは、設計時点での性能を評価する制度であり、第三者認証の代表格として位置づけられています。

ZEBの評価とBELSの評価は、BEI(基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合)という同じ指標を使用しています。BELSではBEIの値によって星の数で5段階評価を行い、ZEB基準を満たしている場合、BELSの星表示に加えて、「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」という表示をすることも可能です。これにより、ZEB認証は、建築物の環境性能とエネルギー効率を明確に示し、環境に配慮した建築物の普及を促進しています。

ZEB化実現までの流れ

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証の手続きは、新築と既築で異なります。環境省のWEBサイト「ZEB PORTAL」で紹介されている、「ZEB化実現までの流れ」を参考に解説します。

  • 既存建築物を調査する: 既存建築物のZEB化の可否を調査する
  • 基本設計を行う:調査結果をもとに、ZEB化の計画を立てる
  • 詳細設計を行う:基本設計を元に、詳細図面を作成する
  • 省エネ計算を行う:BELS評価でBEIが0.5以下であることを証明する

改築の場合は基本設計の前に建築物調査が必要です。既存建築物のZEB化の可否を確かめ、計画を立てる必要があります。

さらに、補助金を取得する場合は以下の手続きが必要です。

  • 補助事業申請を行う
  • 期間内に工事を完了する
  • 補助事業の執行団体による竣工検査を受ける
  • 期間内に実績報告書を提出する

ZEB認証のメリット

 

ZEB認証を取るとたくさんのメリットがあります。

  • 光熱費が削減できる
  • 不動産の価値が上がる
  • 環境にやさしい
  • 企業の信頼性が向上する

これらのメリットは、長期的な経済的効果と社会的貢献を兼ね備えており、ZEB認証は持続可能な社会に大きく寄与します。

光熱費が削減できる

ZEBは、光熱費を削減できます。その理由は、一次エネルギー消費量を極めて抑えた設計だからです。ZEBは建築物全体のエネルギー効率が高く、必要最小限のエネルギーで運用できます。これは、日々の生活やビジネスにおいて大きな経済的メリットです。

具体的には、ZEBではエアコンや換気、照明などの設備が高効率で動作するため、従来の建築物に比べてエネルギー消費量が大幅に少なくなります。さらに、使用するエネルギーの多くは太陽光発電などの再生可能エネルギーによって賄われるため、環境にも優しく、ランニングコストの削減に繋がります。

ZEBは長期的に見て有益な投資です。光熱費の削減は、特に長期にわたって建築物を運用するビルオーナーや企業にとって大きな利点です。

不動産の価値が上がる

ZEB認証を取得することにより、不動産の価値が上昇します。なぜなら、ZEBが環境に優しく、エネルギー効率が高いエコな建築物であるためです。環境への配慮と経済効率の両方を兼ね備えた建築物は、市場において高く評価されています。

ZEBの建築物は光熱費が安いため、オーナーにとっては運用コストが削減されます。これはテナントにとっても大きなメリットとなるため、不動産の価値を大きく上げる要素です。また、ZEBへの投資は、企業の環境への取り組みとしても評価され、建築物自体のブランド価値を高める効果があります。

ZEB認証は不動産の価値を高め、長期的な資産価値の向上に貢献します。環境意識が高い現代において、ZEBは不動産市場で大きなアドバンテージとなります。

環境にやさしい

ZEBは、環境にやさしい建築物です。なぜなら、ZEBが使用するエネルギー量が少ないため、二酸化炭素(CO2)の発生を大きく抑制できるからです。電力などの消費エネルギーが多いと、その分化石燃料の使用量が増え、CO2の発生が増加します。ZEBでは、エネルギー消費を抑制し、さらには太陽光発電などの化石燃料に頼らない再生可能エネルギーを積極的に使用します。これは、地球温暖化対策において重要な役割を果たし、環境保護の観点からも非常に価値が高いと言えます。

ZEBは、単にエネルギー効率の高い建築物であるだけでなく、環境への配慮を実践する建築の代表例として、これからの建築業界でますます重要になっていくでしょう。

企業の信頼性が向上する

ZEBの認証を取得することにより、企業の信頼性が向上します。これは、ZEBが環境に配慮した建築物だからです。環境保護は、企業の社会的責任(CSR)の一環として、現代社会において高く評価されています。

2030年の温室効果ガス削減目標や2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、世界的な動向として重視されており、これらの目標に貢献する行動は企業のイメージを大きく向上させます。ZEB認証を取得することは、これらの環境目標に積極的に貢献していることを示す証となります。

ZEB認証の注意点

ZEB認証には注意点もあります。

  • 補助金がもらえない場合もある
  • 認証には費用がかかる

これらの注意点を理解し、事前に計画に組み込むことが、ZEB認証取得の成功に向けた重要なステップです。

補助金がもらえない場合もある

ZEBの取り組みにおいて、補助金が必ず受けられるわけではありません。この理由は、補助金には申請の期限や補助率が設定されているためです。補助金は無制限に提供されるものではないため、計画段階で考慮すべき重要なポイントです。

環境省のZEBPORTALによると、新築建築物のZEB化や既存建築物のZEB化支援は令和2年度から6年度までとされていますが、これが永続的に続くとは限りません。また、補助金の額はZEBの種類や建築物の面積によって異なり、1/3から2/3までの範囲で設定されています。

ZEB化を検討する際には、補助金の最新の情報を確認し、その適用範囲や条件を計画に織り込むことが重要です。

認証には費用がかかる

ZEBの認証を取得するには、一定の費用が必要です。その理由は、ZEBの基準を満たしていることを証明するために省エネ計算が必要だからです。建築物のエネルギー効率を正確に評価するためには、専門的な知識と計算が求められます。

具体的には、ZEBの評価を証明するためには、BELSなどの認証も必要となる場合があります。BELSは建築物の一次エネルギー消費量を評価するための制度ですが、この計算は専門的な知識を要し、専門家に依頼する必要があるため、専門家への報酬や関連する管理費用が発生します。

ZEB認証は、省エネと環境配慮の観点から非常に価値がありますが、そのプロセスには専門的なアプローチが必要であり、そのための費用を予め計画に含める必要があります。

ZEB認証の手続きとは?メリットやデメリットも解説【まとめ】

 

この記事では、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証の重要性とその手続きを詳しく解説しました。ZEB認証は、光熱費の削減、不動産価値の向上、環境保護、そして企業の信頼性向上といった複数のメリットを提供します。しかし、補助金が受けられない可能性や認証に伴う費用など、いくつかの注意点もあります。これらの点を踏まえた上で、新築や改築におけるZEB認証の手続きを進めることで、より持続可能で価値ある建築物を実現できるでしょう。

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