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2023
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断熱等性能等級とは?新設された等級6、7の詳しい内容につ

断熱等性能等級とは?新設された等級6、7の詳しい内容について

 

現代の建築では、環境配慮が欠かせないテーマになっています。特に「断熱等性能等級」の理解はとても重要です。この等級は、住宅の断熱・省エネ性能を数値化し、より高性能な住宅建築を促します。本記事では、新設の等級6、7を含む断熱等性能等級の意義と、高断熱住宅を実現するためのポイントを紹介します。高断熱住宅を建てるための知識を深めたい方は、ぜひ最後まで読み進めて下さい。

断熱等性能等級とは

 

断熱等性能等級とは、住宅の断熱性能を数値化した等級システムです。このシステムは、国土交通省が定めた「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の下で設定されています。

当初4つしかなかった等級は、2022年4月に等級5、2022年10月に等級6と7が追加されました。数字が高いほど優れた断熱性能であることを示しています。

新設された等級6、7

2022年10月1日に導入された断熱等性能等級6と7は、住宅の省エネ性を一段と向上させるための新基準です。等級7は、暖冷房に必要な一次エネルギー消費量を約40%削減できる高性能を指します。一方、等級6は、同じく約30%のエネルギー削減が可能なレベルです。

2025年には現行の等級4が義務化され、2030年にはさらに厳格な基準が検討されています。これらの新設等級は、省エネルギー性の高い住宅建築を促進し、環境に優しい未来へのステップとなることが期待されています。

ZEH基準との関係性

ZEH(Net Zero Energy House)基準は、断熱等性能等級5に相当する省エネ基準です。ZEH住宅は、太陽光発電や高断熱外皮の利用により、消費エネルギーより多くのエネルギーを生み出して、一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にすることを目指した住宅です。この基準は、生活で使うエネルギーを自宅で賄うことで環境負荷の低減に寄与します。断熱等性能等級の向上はZEH基準達成に欠かせない要素で、より効率的なエネルギー管理のために必要です。

HEAT20との関係性

HEAT20とは、「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称です。省エネ住宅の高断熱基準を提案しています。この基準は、G1、G2、G3のランクで評価され、国が定めているものよりも厳しい基準です。

断熱等性能等級6は、HEAT20のG2ランクに相当し、等級7はさらに上のG3ランク(特定地域において)に該当します。HEAT20の基準を満たすには、断熱材の厚さだけでなく、建築的、設備的、創エネルギー的な要素のバランスが求められます。これにより、コストと性能の両面でバランスの取れた高断熱住宅が実現します。

断熱等性能等級の内容

断熱等性能等級の説明には以下の3つの要素が大切です。

  • 地域区分
  • UA(ユー・エー)値
  • ηAC(イータ・エー・シー)値

これらの数値をみると、地域ごとの断熱基準や建築物の断熱性能がわかります。省エネルギー効果の高い住宅を実現するために必要な要素を解説します。

地域区分

断熱等性能等級の地域区分は、日本全国を気候特性に基づいて8つに分けています。これは、各地域の気候差を考慮し、適切な断熱性能を確保するためのものです。例えば、寒冷な北海道は地域区分1、2に該当し、温暖な沖縄は区分8に分類されます。地域によって異なる断熱基準を設けることで、各地域の気候に最適化された省エネルギー住宅が実現します。また、同じ県内でも地域によって区分が異なることがあり、それぞれの地域特性に合わせた断熱性能が求められます。

【地域区分の目安】

  • 1、2:北海道
  • 3:青森県・岩手県・秋田県
  • 4:宮城県・山形県・福島県・栃木県・新潟県・長野県
  • 5、6:上記・下記以外
  • 7:宮崎県・鹿児島県
  • 8:沖縄県

UA(ユー・エー)値

「UA値」とは、室内と屋外の熱の伝わりやすさを示す重要な数値です。「外皮平均熱貫流率」とも呼ばれ、単位温度差当たりの外皮総熱損失量を外皮総面積で割ることで求められます。UA値が低いほど断熱性が高く、熱が逃げにくい建築物であることを意味します。

地域区分によってUA値の基準値が異なり、例えば地域区分1、2は0.46、区分5、6、7は0.87となっています。これにより、各地域の気候に適した断熱性能が確保されます。

ηAC(イータ・エー・シー)値

ηAC(イータ・エー・シー)値は、冷房期の日射熱取得率を表します。これは太陽の日射がどれだけ室内に入りやすいかの指標で、単位日射強度当たりの熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で割って算出されます。

ηAC値が小さいほど、日射の入りにくい、つまり遮蔽性能が高いことを意味します。地域区分によってこの値の基準が異なり、例えば地域区分5では3.0、区分6では2.8、区分7では2.7が基準値となります。この値によって、地域の気候に適した日射熱の取得や遮蔽を実現できます。

断熱等性能等級を高めるポイント

断熱等性能等級を高めるには、特に2つのポイントが重要です。

  • 高性能な断熱材で住宅を覆う
  • 高断熱サッシを使用して熱の行き来を防ぐ

これらは外皮部分からの熱損失を大幅に減らし、窓からの熱の出入りを効率的にコントロールします。断熱等性能等級を向上させ、快適で省エネ性能に優れた住環境を実現するために重要です。

高性能な断熱材で住宅を覆う

高性能な断熱材で住宅を覆うことは、断熱等性能等級を高める有効な手段です。外皮部分の断熱は省エネ対策の根幹で、建築物全体の保温性を向上させるからです。これにより、空調の効率が格段に上がります。

高性能な断熱材を選ぶときは、熱伝導率が低い材料に注目する必要があります。発泡系のウレタンフォームやポリスチレンフォームのほか、繊維系のグラスウールでも高性能な商品はたくさんあります。また、点検口にも断熱材を充填して断熱の欠損をなくすことが重要です。断熱材に着目することで、住宅の断熱性を最大限に引き出し、省エネ効果を高められます。

高断熱サッシを使用して熱の行き来を防ぐ

高断熱サッシを使用することで、断熱等性能等級が向上します。窓は特に熱の出入りが多い部分です。冬は冷気が、夏は熱気が侵入しやすいため、窓自体の断熱性能が重要になります。具体的には、熱伝導率が低い高断熱サッシを使用すると効果的です。特に、樹脂サッシやトリプルガラスは断熱性に優れています。既存の住宅では、内窓の設置やガラスの改修により断熱性を高められます。これにより、エネルギーの無駄遣いを減らし、快適な室内環境を実現できます。

断熱等性能等級を高めるメリット

断熱等性能等級を高めることで、生活の質を向上させる多くの利点があります。

  • 光熱費が節約できる
  • 室内が快適になる
  • ヒートショックのリスクを軽減できる
  • 補助金や住宅ローン優遇が受けられる

これらのメリットを通じて、快適で経済的な住宅を実現することが可能です。

光熱費が節約できる

断熱等性能等級を高めることで、光熱費を大幅に節約できます。これは、高い断熱性が空調の消費エネルギーを減少させるからです。断熱性が高い住宅は外気の温度変化に強く、室内温度を一定に保ちやすくなります。その結果、エアコンやヒーターなどの消費電力が低減され、運転時間も短縮できます。冬は暖房の効率が上がり、夏は冷房の冷気が逃げにくくなるため、年間を通じてエネルギーコストの削減が見込めます。断熱性能を高めることで、家計に優しいだけでなく、環境への負担も軽減できます。

室内が快適になる

断熱等性能等級を高めると、室内の快適性が向上します。これは、壁や天井の表面温度が室温に近づくためです。室温と壁や天井の表面温度に差があると、体感温度は室温よりも低くなります。体感温度は、室温と室内に面する壁や天井の表面温度との平均で決まります。高断熱の住宅では、これらの表面温度が室温に近いため、一年中快適な室内環境の実現が可能です。

ヒートショックのリスクを軽減できる

断熱等性能等級を高めることは、ヒートショックのリスク軽減に効果的です。その主な理由は、室内温度の均一化が図れる点にあります。具体的には、トイレや脱衣所、浴室などの室温が居室と近くなるため、衣服を脱ぐ際の身体への負担が減少します。これらの部屋はヒートショックが起こりやすいため、大きなメリットです。また、断熱性の高い住宅では、夜間の就寝時や朝の起床時に室温が急激に下がることが少ないです。これにより、体調を崩しやすい急な温度変化から守られます。

補助金や住宅ローン優遇が受けられる

断熱等性能等級を高めると、補助金や住宅ローン優遇の恩恵を受けられます。環境省や経済産業省、住宅金融支援機構などが、断熱性能の高い省エネ住宅を支援するための優遇制度を設けているからです。例として、認定長期優良住宅では住宅ローン控除や固定資産税の減税があります。ZEH補助金では55万円〜112万円、LCCM住宅整備推進事業では140万円の補助金が提供されています。これらの制度により、断熱等性能の高い住宅の整備が促進されます。補助事業については条件や期間が定められているので、認定が受けられるか、申請が可能かを計画段階で確認する必要があります。

断熱等性能等級を高めるデメリット

断熱等性能等級を高めるデメリットもあります。特に考慮すべきは以下の二点です。

  • 建築費用が高くなる
  • 高い断熱等級は施工精度が必要

これらの点を理解し、計画的に進めることが重要です。

建築費用が高くなる

断熱等性能等級を高めると建築費用が増加します。高い断熱性を実現するためには、材料費も施工費も高くなるためです。具体的には、断熱性能が高いサッシや断熱材を使用すると、これらの材料自体の費用が高くなります。さらに、これらの高性能な材料を適切に施工するためには気密処理などの工程が増え、それに伴い施工手間も増加します。断熱等性能等級を高めるためには、材料費と施工費がある程度高くなることを見越しておく必要があります。

高い断熱等級は施工精度が必要

断熱等性能等級を高めるには、高い施工精度が必要です。なぜなら、隙間や施工ムラがあると、断熱性能を十分に確保できないからです。高い断熱性能を実現するためには、外気と室内の温度差を生じさせない気密処理が不可欠。さらに、断熱材を隙間なく施工し、端部や継ぎ目に気密性の高いテープを貼る必要があります。これらの気密処理は施工品質に大きく依存します。高い断熱等級を達成するためには、細部にわたる精密な施工が求められます。

断熱等性能等級とは?新設された等級6、7の詳しい内容について【まとめ】

 

環境への配慮は、現代建築において避けて通れない重要なテーマです。断熱等性能等級を活用し、省エネ性に優れた住宅を建てることは、家計にも地球環境にも優しい選択と言えます。高断熱の住宅は、光熱費の削減や居住環境の向上、さらには温暖化対策にも寄与します。新設された等級6、7を含む断熱等性能等級を理解し、適切に活用することで、快適で環境に優しい住宅を実現できます。

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